新規事業の立ち上げ方・5つのプロセス

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社内で新規事業を立ち上げる際、担当者としてどのようなポイントに注意しながらプロジェクトを進めていくべきか、5つのプロセスに分けて紹介したいと思う。

僕も以前勤めていた会社では、新規事業を立ち上げる部署にいて、様々な経験を積まさせていただいた。なんだかんだ20年くらい、新規事業企画の仕事をやってきたような気がする。

手掛けてきた新規事業プロジェクトの多くは残念ながら失敗し、少数の新規事業プロジェクトは形を変えながら既存事業の中で生きながらえ、ごく一部の新規事業プロジェクトは当時としてはそこそこうまくいった。

今回、当時の頃を思い出しながら、新規事業をうまく立ち上げるためのポイントを、僕なりにまとめてみた。
対象は、中堅〜大企業で、ある程度成熟期に入った会社での新規事業のケースを想定している。なぜならば、僕が以前いた会社がそうだったから。あくまで一例として、参考になれば幸いである。

では、本編に行こう。

社内新規事業の立ち上げ方・5つのプロセス

ステップ1)新規事業のネタを見つける。

まずは、新規事業のネタ探しである。新規事業のネタを探す切り口としては、オーソドックスに以下の3つのアプローチがあるかなと思う。

1)会社の既存事業の課題からアプローチする(課題解決型)

自社の既存事業の戦略課題をブレークダウンする形で、隣接する領域で新規事業ネタを設定するパターンである。
隣接分野の見つけ方として、よく使われるフレームワークとしては、「既存顧客・新規顧客」と「既存商品・新規商品」を4象限のマトリクスで示して、「既存顧客×既存事業」以外の3つのボックスのどこのボックスで新規事業の挑戦をするか、掘り下げていく方法である。

新規事業の立ち上げマトリクス

ちなみに新規事業としてのリスクが低いのは「新規事業①」のフィールドであり、一番リスクが高いのが「新規事業③」である。

2)社長の言葉から探す(ビジョン型)

これは特に新しい社長に変わったばかりの時に、その新社長が唱えるビジョンやよく使う戦略キーワードを具体的な新規事業ネタとして落とし込むアプローチである。
基本的に社長というのは、お題目を唱えるだけで、自分の手でそれを具体的な何かに落とし込むことができない立場にある。そこに多くの社長は苛立ちを覚えてたりもする。それを自分が拾ってあげて、新規事業として「これじゃないですか?」と示すのである。
ただし、この方法は、社長の気が変わったり、社長が新しく変わったりすると、急に効果を失ってしまうことがあるので注意が必要である。(苦笑)

3)外部のトレンドから探す(イノベーション型)

世の中のこれからの流行のキーワードやムーブメントに乗っかるやり方である。ここで大切なのは、「このムーブメントに乗っかっとかないと、我が社は置いてかれてしまうかもしれない」感の共有である。成熟した企業にありがちな、破壊的イノベーションの恐怖に対するカウンターを引き出す作戦でもある。

上記3つのどれかからのブレークダウンでもいいのだけど、できれば、3つの要素すべて兼ね備えたロジックで新規事業ネタを肉付けしていければさらに突破力がつくと思う。

ステップ2)なぜそれをやるのは自分が適任なのか、の根拠を作る

社内の新規事業の提案でありがちなのは、担当者の「熱意」のアピールと、綿密に作り込んだ「企画書」のクオリティ(これも一種の熱意のアピール)だけで押し通そうとして、失敗するケースがある。

新規事業の立ち上げを決裁する側に立った場合、企画の中身と同じくらい大切なのは、それを誰に任せるか、という視点である。つまり、その新規事業の提案をしている担当者に、それを任せていいのか?という判断がそこで入る。

この視点をパスするためにも、新規事業ネタを見つけたら、次に、そのネタを進める当事者として適任なのはなぜ自分なのか、という根拠を作っていくことが大切だと思う。

具体的には、「すでに個人レベルでこんな活動に着手している」とか「すでに自分のほうで外部にこんな人脈を作って、ある程度の感触を得ている」といったようなファクト作りである。

PDCAという言葉があるが、社内の新規事業立ち上げの場合、フライング気味に小さな「D(実行)」から始めて、ある程度既成事実を作ってしまって、それをベースに社内説得に入る、というプロセスが、かなり有効なんじゃないかな、と個人的には思っている派である。

ステップ3)コミュニケーションのパスを整備する。

新規事業のネタとファクトを作った後、次は、それをどういう人に相談して、どういったルートを踏まえて決裁をもらうべきか、コミュニケーションのパスを整備する必要がある。

社長に最終決裁をもらうためには、どの役員や上職に話を事前に通しておくべきか、それぞれの人の志向や立場を理解した上で、相手のプロトコルに変換した形で、新規事業プロジェクトの意義を説明し、進めていくにあたってのアドバイスをもらっておく。

新規事業決裁の地ならしをするという意味もあるけど、同時に、どんなキーワードやロジックを使うと社長から決裁がもらいやすいかという、事前インタビューとしても重要なステップじゃないかな、と思う。

ステップ4)企画書を作る。

事前インタビューなども踏まえ、企画書策定に入る。
ここで作る企画書の目的は、
・新規事業へのトライアルにGOサインをもらうこと(=予算と権限をもらうこと)
・トライアル開始後の次のチェックポイントの成果軸を決裁者と握ること

である。

なので、新規事業の規模によりけりだが、ここではまだ「事業計画書」というより、「新規事業のトライアルをするための活動計画書」みたいなレベルで十分かなと思う。

構成例としては、
1.新規事業の仮説
2.仮説検証するための活動計画
といった内容になる。

1.の新規事業の仮説については、
・新規事業に挑戦する目的、位置づけ
・新規事業の仮説
・新規事業の市場、競合分析
を中心に構成していくイメージ。

このパートで大切なことは、一方的な熱意や反論できないロジックを全面に押し出すのではなく、決裁者の課題感やビジョンを反映した新規事業の目的や仮説になっているかということである。あくまでこちらは決裁者の代弁者なのである。

2.の仮説検証するための活動計画については、
・トライアル期間と活動内容
・成果設定
・必要なリソース、予算
を中心に構成していくイメージ。

このパートでは、初期投資のサイズと成果内容とチェックポイントの時間軸を握ることが大切である。そして、できれば新規事業の立ち上げはスモールスタートで短いタームでのPDCAを回す設計をお勧めする。

一方、社長というのはだいたいせっかちで、一度やると決断したら、初めから前のめりで投資してすぐリターンを得ようとしがちな生き物である。
そこをうまく折り合いをつけて、初期の投資規模、成果内容と時間軸をどう調整できるか、がその後のプロジェクトマネジメントに大きく影響する。

ここの塩梅は本当に難しい。コンサバな成果設定をすれば、説明時にボコられるし、アグレッシブな成果設定をすれば将来ボコられる。誰も正解を持っていない問いではあるが、ここは会社の中の自分の役回りとして、アグレッシブな成果設定に振っておくことをおススメする。(だいたい達成できずに後でボコられるけど)

ステップ5)立ち上げ準備に入る

決裁者の承認が下りたら、正式に新規事業の立ち上げ準備に入る。
この期間で大切なことは「プロジェクトチーム作り」と「新規事業立ち上げ後のシナリオ作り」である。

1.プロジェクトチーム作り

どんな人を自分のプロジェクトチームに入れるか、当たり前だけどとても大切である。
僕の経験則的には、
・専門知識については外部人材をうまく使う。
・社内メンバーをアサインする場合は、スキルよりマインド
この2点である。

新規事業プロジェクトの立ち上げで多くの時間を費やしてしまうのは、教育(経験値を得る)コストと、コミュニケーションコストである。

教育コストについては、知識や経験のあるスタッフを外部から調達し、一緒に働きながら吸収していくことが一番コスパがいいと思う。

コミュニケーションコストについては、自分と同じテンションやゴールイメージを共感してくれるメンバーを優先して仲間に入れるべきだと思う。ここがマッチしていないメンバーをいれると、意識合わせの内部MTGの時間が膨大に増え、「正論というブレーキをかけるメンバー」「そもそも論をもち出して議論を過去に戻すメンバー」によって、貴重な時間が奪われることになるだろう。

2.新規事業立ち上げ後のシナリオ作り

この準備期間で、どこまで新規事業立ち上げ後の社内報告シナリオが想定できているかが、その後のプロジェクト運営に大きく影響する。プロレスの試合前のアングル(台本)作りのようなものである。

ある意味、「このタイミングでこんな成果報告を社内に対してしておきたい」的な視点から、逆線表を引いて活動プランを精緻化していく思考が大切だと思う。

正直なところ、新規事業はセンミツなので、社内の大多数の人はあなたの提案した新規事業が成功するとは信じていない。
そもそも決裁をもらう時に、アグレッシブな成果目標を握らされているケースも多いので、その点についても、成果達成は難しいだろうなぁ的な社内雰囲気が往々にしてあると思う。

一方で、新規事業というのは、そんなにすぐに事業化できるものではない。なので、当事者として初期のプロジェクトマネジメントのKPIは「いかにトライアルする権利を持ち続けられるか」的な、いわば時間稼ぎ的な活動も正直大切である。

そのためには、社内世論をどう味方につけるか、というポイントが新規事業を継続させるために必要な要素になる。

社内世論を味方につける手法として、僕が意識的に取り組んだ戦術は以下の2つである。

1.外部からの評価や実績をまず作る。

ターゲットとなる顧客からの評判や、外部の協業パートナーとの取り組み実績をまず作る。定量的な成果がなくても定性的な評価コメントや、単なるファクトでもいい。社内世論は外部の評判に引っ張られることが多い。北野武監督が初期、外国の映画祭に作品を積極的に出品して、間接的に国内評価を作っていった戦術と似ているかもしれない。

2.他の事業部門の営業活動に何気に貢献する。

新規事業の顧客開拓をするために、他の事業部門の営業スタッフの商談に同行した際に、新規事業の商品をネタに既存商品の商談が活性化するケースがある。
そうなると、既存事業部門の営業スタッフは、自分の売上目標を達成するためのドアノックツールとして、新規事業の存在価値を認めるようになる。
新規事業のコストは自部門で持つことがなく、売上貢献してくれる、という図式に気づいてくれれば、とりあえず味方になってくれるだろう。

そんな感じで、新規事業の立ち上げ後、どんな活動を展開して、そこでどんな短期的な成果(=小さな成功)をアウトプットしていくのか、本筋の成果設計と合わせて、社内世論を作るための成果設計(時間稼ぎの成果設計)というのも、継続して新規事業プロジェクトを続けていく環境を手に入れるための重要な活動である。

まとめ

以上が、新規事業の立ち上げ方の5つのプロセスである。僕の経験をベースにまとめたので、網羅性のある形になっいる訳ではないが、なんかしらのヒントになれば幸いである。

ちなみに今回のテーマは新規事業の「立ち上げ方」である。「成功のさせ方」ではない。
もし、ニーズがありそうだったら「新規事業の成功のさせ方」的なことも書いてみたいけど、ぶっちゃけそこまで自慢できるような成功体験もないので、おそらくその時は新規事業の「失敗の避け方」についての話になるかもしれない。

ちなみに「新規事業の企画・立ち上げに参考になるフレームワーク解説記事8選!」というまとめ記事も以前書いたことがあるので、参考までにどうぞ。

それと、ディレクターバンクでは、新規事業の立ち上げの外部人材として、Webの新規事業立ち上げ支援などもサポートしているので、興味のある人はお気軽にご相談ください。

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