企業のデジタルマーケティング支援をしている立場上、日頃からいろんな方から、自分たちの事業や仕事のあり方について課題を聞く機会が多い。
そして、いろんな人から課題を聞くにつれ、「課題設定力」って、大切なスキルだよなぁと痛感している。
もちろん、聞き手としてだけでなく、僕自身も現在、事業を運営している当事者として、課題設定と実行の試行錯誤を繰り返している立場でもある。
そんな僕が、なぜ課題設定力が大切だと考えているのか?そして、課題設定力を磨くためにはどういう観点で思考していけばいいのか?といった点について、僕なりに考えたことや学んだことを、この記事に書いていこうと思う。
戦略や事業企画の仕事をこれから始める人や、組織マネジメントの一貫としてチームで課題解決のアプローチを取っていきたいリーダーの方向けに、参考になれば幸いである。(参考にならなかったらすみません)
では、本編に行きたいと思う。
なぜ課題設定力が大切なのか?課題設定次第で行動が変わるから。
本質を捉えた課題設定には、当事者の行動を大きく変える力がある。
それが組織的な課題だと、みんなの力を集めてひとつの方向に向かって大きな行動変容を生む原動力になる。
結論から言うと、それが課題設定力を磨く大きなメリットだと僕は考えている。
当たり前だけど、課題認識(=意識)が変われば、行動が変わる。
行動が変われば未来も変わる。
小さすぎたり、意識が低すぎる課題設定だと新しい行動や変化はほとんど生まれない。
間違った課題設定だと間違った方向にみんなの行動を向かわせてしまう危険性もある。
課題設定とは、実現させたい未来に辿り着くための行動指針であり、山登りをする時の登山ルートを設計するようなものだと僕は思っている。
そもそも課題とは?問題と課題の違い
課題設定の議論で、ありがちなのが「問題」と「課題」が入り混じった議論になることである。
それぞれの言葉の意味をググると説明が出てくると思うけど、僕的には以下のような形でそれぞれの言葉を位置付けている。
- 問題とは「客観的にマイナスの影響をもたらす事実」
- 課題とは「当事者として未来に向かうための取り組むべきテーマ」
つまり、問題と課題は、そもそも立ち位置が違う。
問題はネガティブな現実だけど、課題はポジティブな未来への取り組みなのである。
そして、もっと大きな違いは「当事者意識」である。
極論、当事者意識のない課題は、課題ではない。
課題は、当事者の言葉で語られることによって、はじめてそれが課題として認知されるようなところがあると思う。
ちなみに、リクルートの企業文化を表す言葉のひとつに「圧倒的な当事者意識」という言葉があるそうだ。
それは、社員一人一人がいつも当事者として課題認識をもって、新しい挑戦を続けていく起業家精神を社風として根付かせたい考えがあるのだと、僕的に勝手に想像している。
参考までに、この「圧倒的な当事者意識」について、過去僕が書いた記事があるので、興味のある方はこちらをどうぞ。↓
課題設定力を磨くメリット
課題設定力を磨くメリット(=いい課題を見つける効果)は大きく3つあると思う。
1.成功確率を上げる。
いい課題設定には、現状の立ち位置と未来を俯瞰した上で、何に取り組めばそこに辿り着けるのかといった、戦略仮説が存在する。
課題認識がないまま、森の中で漠然とゴールの方向に進んでいくより成功確率は高いと思う。
現状の立ち位置と未来のギャップが大きいほど、一度取り組みの手を休めて、どこに本質的な課題(最短の登山ルート)があるのか、俯瞰して思考すべきだと思う。
「木こりのジレンマ」というビジネス童話(?)がある。
刃こぼれしているのこぎりで一生懸命、木を切っている木こりに、「木を切るのをやめて、のこぎりの刃を砥いてみたら?」とアドバイスすると、「今、木を切るのに忙しくってそんな暇はない」と言って、ボロボロののこぎりで木を切り続けている木こりの話である。
課題設定というのは、無駄な行動を省く、戦略思考の第一歩になると思う。
2.自分たちの迷いをなくす。
いい課題設定は、自分たちが取り組むべき具体的な行動を想起させる。
曖昧な課題設定や、自分ごとに落ちていない課題設定だと、具体的に何をすればいいか迷ってしまう。
行動を起こすたびに、この取り組みで合っているのか?毎回立ち止まって、考え込んだり、無駄な議論をしたりして、時間を失ってしまう。それは課題共有がうまく行っていない組織にありがちな光景である。
3.本当にやるべきことに集中できる。
自分ごととして課題認識ができていれば、自分たちが今、何に時間を使うべきか、取り組むべき仕事の優先順位が見えてくる。
前述の「木こりのジレンマ」の話だと、木を早く切るために、明らかに優先すべき行動は「刃を研ぐこと」である。
蛇足だけど、この木こりが、成果報酬でなく、時給で報酬をもらっている立場だったら、そのままの状態でのこぎりを切り続ける作業をすればいいのかもしれないけど。
課題設定力を磨く4つのステップ
1.実現させたい自分たちの未来のポジションを明確にする
未来を想像するというのは、「こういう未来であってほしい」という願望ではなく、客観的に見通しを立てていくことがまず必要である。
その上で、その未来の世界において、自分たちはどのような立場になりたいのか決めなくてはいけない。
ここで大切なのは、悲観的なポジションを選択するのではなく、楽観的なポジション、自分たちが本当にそれを目標として目指したいと思える姿を描くことだ。できれば具体的に。
未来を想像する時、人によっては悲観的な未来を考えがちな人もいるけど、どんな悲観的なファクトで構成された未来の世界であっても、チャンスは必ずある。
2.自分たちの今の立ち位置を明確にする
未来のポジションが明確にできたら、次は未来の視点から見た今の自分たちの立ち位置を明確にする必要がある。
ここで大切なのは、ギャップの定量化であり、例えて言うなら、これから登る山の高さを明確にすることである。
それともうひとつ大切なのは、その山を登るために使える時間も明確にすることである。
例えが古くて恐縮だが、宇宙戦艦ヤマトで毎回、エンディングに出てた「地球滅亡まであと○日」というそれである。
未来の姿とのギャップとチャレンジできる時間を明確にすることが、その後、説得力のある課題設定を作るためのベースになると思う。
3.ゴールに向けての本質的な突破口(レバレッジポイント)を探す
1と2を踏まえて、ここでようやく課題設定を行う。
もちろん、ここの目的は、ゴールに向けての現実的な最短ルートを探すことである。
それは、「本質的な課題とは何か?」「本当に自分たちが取り組まなくてはならないテーマとは何か?」という問いに対して、レバレッジポイントを探すことである。
そして、このステージで大切なのは、「現場をどこまで知っているか」に尽きる、と僕は思っている。
現場を知らない人(例えば、会社の上層部や外部コンサル)が主導して課題策定を始めると、世の中的にある事例やマーケティング情報(いわゆる二次情報)を参考に、結構、ペラッペラなレバレッジポイント(もしくは非現実的なレバレッジポイント)を設定してしまうことがある。
戦略的に俯瞰する視点(鳥の目)も大切だが、そもそも、それが本質的なアプローチになっているのか、現場、現物の視点(虫の目)が、ここではとても重要になってくる。
ここにリアリティがないと、その後の行動変容につながる大きな推進力が生まれない。
説明が抽象的かもしれないけど、ここでの情報編集力というのが、課題設定の成否を分ける大きなポイントだと思う。
4.行動変容につながる課題設定になっているか検証する
3で設定した課題が、当事者としての行動変容につながっているのか、検証することも大切である。
組織の中でみんなお題目のように語られるが、何一つ当事者としての行動変容が促されていない課題設定はそもそも失敗である。
常識的、当たり前すぎる課題設定や、抽象的な課題設定はそうなりがちである。
例えて言うなら、ショッカーは、世界征服という課題設定をしているにもかかわらず、行動変容することなく、あいかわらず近場の公園や幼稚園の襲撃を繰り返し、これまた近場にいる仮面ライダーにいつもやっつけられてはいないか、ということである。(すみません)
まとめ
課題設定が成功したかどうかを測る軸は、どれくらいの量の行動変容が発生したかどうかなんだろうと僕は思う。
設定した課題が正しいかどうかなんて、本当のところは誰にもわからない。
ただ、行動変容(変化)が生まれてさえすれば、極論、課題設定が間違っていたとしても、また課題修正して新しい行動変容(変化)を作っていけばいいんじゃないか、と僕は思っている。ズルいかもしれないけど。
そこには、関係者がみんな「自分ごと」として、あるべき未来に一緒に取り組んでいきたい気持ちになる、日頃の信頼関係がベースにあることが本質的には大切なことなんだと思う。
これからの成熟社会において、用意された「正解」というものはなく、当事者としての「納得解」を自ら作っていく、というスキルが人生を豊かにするために必要だという話を聞いたことがある。
そういう意味で、課題設定力というのは、自分たちの納得解を思考する出発点として、また、実際の行動を発生させるトリガーとして、とても大切なスキルなんだと僕は考えている。
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