営業組織の最適化を考える時、クライアント軸でのチーム編成にするか、商材軸でのチーム編成にするかウネウネ考えてしまう時がある。
僕の経験だと、クライアント軸で営業部隊が構成されている会社は営業部門の力が強く、商材軸で営業部隊が構成されている会社は開発や製造(運営)部門の力が強かったりするケースが多い。どんな会社でもだいたい部門間は仲が悪く、その力関係で組織編成や戦略の方向性が決まる。
あと、社長が営業出身だと、営業部隊はクライアント軸で構成しようとするし、開発や商品開発出身の社長だったら商材軸で営業部隊を構成しがちだ。
合理的に考えてみると、結局のところそれは、顧客単価やビジネスモデルに依存する。1社から100万円売り上げるか、100社から毎月1万円ずつ売り上げるか、どちらのビジネスモデルを志向するかの違いだ。前者はソリューション型ビジネス、後者はサービス型ビジネスと言ったりもする。
1つの組織にこの2つのビジネスモデルが同居することもある。例えば、大手クライアント向けの営業部門と、新規廉価版サービス(SaaSみたいな)の営業部門がそれぞれある組織。僕の前職の会社はこれに近い状態だった。
この場合、現場の営業の人間の動き方は全く違う。大手クライアント向けの営業はやはり相手とのコミュニケーション時間が売上に比例するので、かなりのマンツーマンの地上戦営業を展開する。
エンドの顧客相手ではなく、販売代理店に自社商品を売ってもらっている場合も、ほとんどこの動きである。(大手クライアント=大手販売代理店とか大手販売パートナー)
一方で、SaaSビジネスとか手がける組織は、徹底的に空中から網を張って、どう効率的に網にかかった魚を引き上げるかという発想で活動をする。一人一人の顧客との距離は詰めずに、全体の群れをいつも追っている感じ。
「営業」という言葉は、前者の御用聞き的な動き方をする人のイメージが強く、後者のような人が「営業」というのは少しイメージが違うのかもしれない。後者の場合、最近だと「マーケティング」みたいな名称を使っている人が多いのかもしれない。
顧客の視点で考えてみると、「営業」というのは「モノを売りに来る人」という風に見える。
本当は、自分のことをわかってくれて、いろいろ手伝ってくれるパートナーが欲しいだけなんだけど。
安直に相談すると、話半分ですぐ商品を勧めて来たりするところが、どうも気が許せない。営業からすると当たり前なんだけど。
新卒採用とかすると、「営業職はちょっと」と敬遠する学生がいる。新人で飛び込み営業させられて怖いおじさんに叱られるイメージとかあるのだろうか。僕が学生だったら確実にそんなイメージがある。
そう考えると、「営業」という言葉はかなりネガティブなイメージがついた言葉になっている。
そもそも「営業」という言葉は、「営利を目的として業務を行う」という意味であり、そんなの別に営業部署じゃなくてもどの部署でも当たり前じゃんと言ったら当たり前だし、もっと本質的なことを言うと「営利が業務の目的ってどうよ」という見方もある。顧客にとっては何の関係のないミッションなのである。
だから、そんな名称のついた組織をどう編成しようかなんて考えること自体、もともと無理があるのかもしれない。
若かった頃、お高めなブランドのお店に入ったら、情報強者の店員が近寄って来てそのオーラに立ち向かえずに、すぐにそのお店を出て行って、ろくにリラックスして買い物できたためしがなかった。
でも、今はネットがある。必要な情報はそこで調べて、後はAmazonでクリックすればOKだ。
顧客と営業の関係は、新しい段階に向かっている。
おそらく、これからは「営業」という名称は無くしてしまった方がいいのかもしれない。営利を目的として業務を行なっているのは、営業部ではなく、そもそも経営者だ。売上数値を評価軸として一部署に任せる時代は終わっているような気がする。
顧客から見て、モノを買う前は必要な情報を提供してくれる人やメディアがあればいい訳だし、モノを買った後はいろいろ相談にのってくれたりサポートしてくれる人(AIでも可)がいれば嬉しい訳である。
前者は「営業」という人種ではなく、その道の「アドバイザー」とか「コンサルタント」だったらありがたいし、後者はなかなか電話が繋がらない「カスタマーサポート」ではなく、いつもそばにいる「アシスタント/パートナー」だったら最高だ。
話を戻して、営業組織の最適化を考える場合、チーム編成をクライアント軸にするか商材軸にするかというのは、そもそもこれらの本質から外れている。
顧客単価が低いから、営業マンがクライアント1社1社の対応しながらモノを売るような組織は難しい、みたいな議論は、すでにある程度ネットが解決してくれているので、実はそこに問題はない。
どちらかというと、「営業」という名前の組織をなくして、「営利」ではない新しいミッションやKPIを持った組織に切り直すことが必要なんじゃないかなと思う。そうなると、営業部門内だけの切り直しでは済まなくなる。
例えば、新規見込み顧客の問題解決をはかる「アドバイザー/コンサルタント」であり、既存顧客の活動をいつも支援する「アシスタントパートナー」みたいなミッションを持った組織。
そんな取り組みをネットを使って低価格かつサスティナブルに提供している組織がこれからはカッコいいんだろうな、とか今、妄想している。新規営業に向かう電車の中で。