新規事業のアイデアは「マイナス」を見つけること

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藤野英人さんの「おいしいニッポン 投資のプロが読む2040年のビジネス」という本を読んだ。

悲観論が山積している現在の日本に対して、20年後、2040年というロングスパンで見た場合、すでに新しいビジネス機会(おいしいニッポン)の芽が育ち始めているのではないか?ということを、著者自身が投資されているベンチャー企業等を例に紹介されている本である。

もちろん、藤野さん自身が日本の成長企業に投資するビジネスをされている立場だということは理解した上で、僕自身、さすがにここまで「日本オワコン」風潮が出回ると、そろそろ新しい成長トレンドが出てくるんだろうなぁ、と思っていたので、とても興味深く読ませていただいた。

この本の中でも紹介されているが、悲観論が強い日本の未来において、どのようにして新規事業のアイデアを探していくべきか、ヒントとなる考え方を僕なりに整理してみたので、紹介したいと思う。

結論)新規事業アイデアの探し方は「マイナス」を見つけること

この本を通じて改めて僕が思ったのは、新規事業のアイデアとは、社会のマイナスを見つけることに尽きる、ということである。

昔読んだ新規事業の本に、「顧客には、何がほしいかではなく、何が問題かを問いなさい」という一節があった。

スティーブ・ジョブズは顧客に聞き取り調査をしてiPhoneを開発したわけではなかった。ヘンリー・フォードは、「自動車が発明される前に、馬車を使っている人に何が欲しいか聞いたら、きっともっと脚の速い馬がほしいと答えただろう」と語っていた。

顧客は、自分が何がほしいのか、その時点では自分で分かっていないことが多い。そして、顧客は「プラスになること」より、「マイナスを解消すること」のほうに優先的にお金を使う。この世界が、自分の理想のようにはいかないことを、だいたいの人が理解しているからである。

なので、新規事業のアイデアは、顧客のニーズではなく、顧客がかかえる問題(マイナス)とはなにか、という本質をとらえるところから始まる。問題(マイナス)がわかれば、それは新規事業の機会(チャンス)になる。

よく、「新規事業は不景気な時にこそ仕込むべき」ということを言われるが、それは不景気な時ほど社会のマイナスを見つけやすい、ということも一因にあると思う。

そして新規事業というのは、社会のマイナスをプラスに変えていく活動そのものなんじゃないか、ということである。最近のパーパスドリブンな形で表現すると。(もちろん、そうじゃない新規事業もあるとは思うけど)

「起業の本質は人のやりたくないことをやることだ。人の思い付かないことをやるのではない」

以前、起業の本質についてそう語った宋文洲さんのツイートに、糸井重里さんが「すごいリアリズム。それは成功率も高そうだ」とコメントしてほぼ日のエッセイで紹介したことがあった。

糸井さんはさらに、人のやりたくないことをガマンしてやっているだけでは仕事は育たないから、「こうすればもっとうまくやれる」とか「こんなふうにしたら、イヤじゃない方法でやれる」と、工夫したり再編集したりするところに、さらに本質があると語っていた。

そういう意味で少子高齢化が進むこれからの日本を見渡すと、人がやりたくないことだらけ、問題だらけである。

新規事業を立ち上げるのは、まさに今がチャンスなのである。ちょっと盛りすぎかな。

次に、「おいしいニッポン 投資のプロが読む2040年のビジネス〜」の本で紹介されていた、新規事業のアイデアを探すための、2つの「マイナス」の見つけ方を紹介したいと思う。

起業アイデアの探し方その1・「穴を探す」

藤野さん自身、投資家として多くの起業家を見てきて思うのは、新規事業は目新しいアイデアによって作られるのではなく、「穴を発見し、それを埋める方法を考える」ことによって生まれているとのこと。

「穴」というのは、社会課題のことであり、「理想としてはこうあってほしいが、現実はそうなっていない」というのが、「埋めるべき穴(ビジネスチャンス)」になるとのこと。

同書で紹介されているベンチャー企業が、ADDress(サービス提供会社:株式会社アドレス)という、月額4.4万円で全国200か所以上の物件に住み放題になるサブスク型の「多拠点居住サービス」である。

こちらの企業は、全国の空き家という「穴」をネットワーク化し、そこに新しい人を送り込む機会をビジネスとして展開されている。

起業アイデアの探し方その2・「未来の課題を探す」

起業アイデアの探し方その1でとりあげた「穴を探す」という手法の、さらに上級編が、この「未来の課題を探す」という方法である。

すでにユーザーが課題だと認識していることであれば、それを解決しようと様々なプレイヤーが参入してくる。

しかし、ユーザーもまだ認識していない「未来の課題」であれば、顕在化していないためコンペティターはいない。

早期に社会実装に向けたテストを重ねていけば、市場の成立と同時に圧倒的なシェアを持つ可能性が高まる。

同書で紹介されているそんなベンチャー企業が株式会社スカイマティックスである。

ドローンを活用した農業支援を手掛けている。この会社のターゲットは「10年後の農家さん(で問題になるであろう課題)」とのこと。

ドローンを活用した農業版Googleマップビジネス等を展開されている。

新規事業アイデアの本丸は実装プロセスにある。

新規事業アイデアの起点として、何らかの「マイナス」を見つけたとしても、それはまだ新規事業アイデアの入り口でしかなく、最終的に、新規事業アイデアの本丸は「マイナス」を埋める「実装プロセス」にある。

同書では、日本がテクノロジーを活かしきれない理由として、「日本にはテクノロジーはあるけれど、それが実際に社会で使われるようにする『社会実装する力』が非常に弱いのではないか」と書かれていた。僕も本当にそう思う。

誰よりも早く、何らかの「マイナス(ビジネスチャンス)」を見つけ、その「解決策(アプローチ仮説)」を思いついたとしても、その実装プロセスが弱ければ、新規事業としてはうまくいかない。

もっと厳密に言うと、大概は実装プロセス仮説に基づいて新規事業のトライアルを始めると、様々な「思いもよらぬこと」にぶつかるので、それらをひとつひとつクリアしていく修正力が大切になる。

この新規事業の仮説・実証のプロセスをいかに誰よりも早く着手し、そして速いスピードで修正していくかが、新規事業における重要成功要因となる。

同書では、テクノロジーと社会実装力の両方を持つ企業は、日本では非常に競争力が高く、今後伸びる可能性が大きいと著者は述べている。

新規事業アイデアの探し方・まとめ

同書の中で著者はこう語っている。

  • これからの10〜20年で日本社会が激変することは間違いはない。
  • そして「それらの変化を見据えて動く人」と、「それらの変化に備えることなく動こうとしない人」との間で、大きな格差が生じる。

繰り返しになるが、悲観論が大勢を占める日本の中で、「あぁ、もう日本ってオワコンだよなぁ」と思考停止して、なんだかんだ現状維持を選択するか、いろんな社会のホコロビを新しい世界に変わるチャンスだと思って新しい行動を起こすかで、未来は大きく変わる。

今の日本は問題だらけである。人口動態も政治も行政も大企業も学校も問題だらけである。

そして、新規事業のアイデアは社会のマイナスを見つけることに尽きる。

ぜひ、大きな穴を発見して、それを埋める新規事業のアイデアを考えてみよう。

そして、それを新しいテクノロジーを使って、どう実装していくか、考えてみよう。

新規事業を立ち上げるのは、まさに今がチャンス。

ベタな締めくくり方だけど、やっぱり、ピンチはチャンスなのである。

ちなみに、社内で新規事業を立ち上げる際に、担当者としてどのようなポイントに注意しながらプロジェクトを進めていくべきか、5つのプロセスに分けて紹介した記事もあるので、よかったらどうぞ。

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