ディレクターバンクは、企業のWebマーケティング支援を行っているので、(ありがたいことに)様々な企業から発注をいただいている。
一方で、フリーランスのWebマーケティングディレクターにも、一緒に企業のWebマーケティング支援を行っていくパートナーとして、発注をさせていただいている。
そして、自分たちが日々、発注をいただいたり、発注させていただいたりする中で、「上手な発注」と「上手じゃない発注」があるなと感じている。
今回、そのあたりの悶々としたところを、以下、自分なりに整理してみた。
もし、これから外部のパートナーに何か発注したい場合、これらのメモが参考になれば幸いである。
そもそも、上手な発注とは何か?
発注する人やテーマによって、「上手な発注」の定義はバラバラだと思う。
例えば、安く発注できた、とか、いい条件で発注先にお願いできたとか。
いろんな定義があるとは思う。
しかし、どんな発注でも共通していることは、「上手な発注」というのは、発注した段階ではわからないということである。
発注とは、仕事のスタートであり、実際は仕事が完了して、アウトプットの評価をしないと、結果的にそれが「上手な発注になっていたかどうか」判断することができない。
要はアウトプットとの相対評価であり、結果論である。かつ、アウトプットがいい仕事の要因が、すべて「上手な発注」によるものか、といえばそうでもない。
あくまで「上手な発注」とは、外部に仕事をお願いしていいコストパフォーマンスを発揮してもらうための、成功要因であり、KPIのひとつでしかない。
なので、「上手な発注」とは何か?と聞かれると、僕的には、「コスパのいいアウトプットを引き出すために、受注者側から見て事前の情報整備ができている発注」ということになる。
大切なポイントは、「受注者視点」ということと「事前の情報整備」ということである。
受注者視点の事前の情報整備とは?
では、受注者視点でどのような事前の情報整備があれば、結果、上手な発注につながっていくのか?僕は以下の3つのポイントが大切だと思っている。
- 受注側が何をすべきか具体的な業務領域が定義されている
- 見積もりの根拠となる業務量が、受注側と発注側双方で検証しやすい単位で提示されている
- 発注側の課題と、どんな発注側のメンバーと仕事のやりとりをしていくのか、発注者の顔が明確になっている
以下、それぞれの補足説明。
1. 受注側が何をすべきか具体的な業務領域が定義されている
例えば、発注側に知見がなくて、プロの人に仕事をお願いする場合、具体的な業務依頼ができない、ということがあると思う。
その場合は「全然わからないので、まるっとお願いします」と言えばOKである。
ここで大切なのは、どこまでが発注者がわかっているか、わかっていないか、またはどこからお願いしたいのか、その境界線をはっきり明示することである。
逆に良くないのは、その業務についての知見がないのに、わかっているふりをして、仕事の業務分担を曖昧にしたまま発注することである。(これは後で事故になりやすい)
2. 見積もりの根拠となる業務量が、受注側と発注側双方で検証しやすい単位で提示されている
はじめての仕事に関しては、やってみなくてはわからないと思うので、かなりのフェルミ推定っぽい仮説でお互い見積もりを共有しつつ、定期的に業務量の見積もりを両者でし直していくスタンスを両者で握れればいいかなと思う。
ここで大切なのは、できるだけ作業レベルで定量的に推測した仮説で、お互いに業務量を共有することである。
そして、直接作業時間だけでなく、コミュニケーションを含めた間接作業時間もできるだけ顕在化させることである。
もし、業務量を見積もれる材料がまだ固まっていない場合は、逆に予算枠を伝えて、その予算内でできる業務ボリュームをヒアリングするというアプローチもある。
余談だけど、発注者側の情報開示で、業務量が曖昧で、かつ予算も開示しないまま、とりあえず見積もりを依頼されるケースがたまにある。
とくに予算について、先に伝えると、その後の価格交渉ができなくなる、というイメージがあるのかもしれないが、それは発注者にとって結果的にデメリットしかならない。
予算枠があれば、あらかじめ伝えておいたほうが、受注側もその範囲でできるだけいい成果の業務内容の提案をしようと努力すると思うし、予算が未定であれば、「未定なんです」と正直に伝えておいたほうが、その後、社内で予算取りをする時に相談に乗ってくれる可能性もある。
3. 発注側の課題と、どんな発注側のメンバーと仕事のやりとりをしていくのか、発注者の顔が明確になっている
受注側も人間なので、自分がやる仕事がクライアントにとっての課題解決にどう関係するのか、あらかじめわかったほうがやる気が出るし、どんな立場の人と主な仕事のやりとりをするのか、あらかじめわかったほうが無駄なコミュニケーションコストがかからなくて済む。
また、課題を事前に共有することで、受注側も単なる作業代行から、課題解決をおこなうために何をすればいいか、発注者と同じ視点で仕事に取り組みやすくなる。
まとめ
人手不足と仕事の専門化が進むと、外部に上手く業務発注するスキルは、AIをうまく活用するのと同じくらい、今後重要なビジネススキルになるのだと思う。
垣根を超えて、外部の人材やその道の専門家とのフラットな協業をどう組み立てていくことができるか。
できるだけ自分たちが抱えていることをオープンにして、なにかあった時には一緒になって考えていく関係性を作ることができれば、ワンショットの付き合いではなく、長く付き合ってくれる自分のチームメンバーになってくれる。
僕も自分で仕事を溜め込まず、うまく人に仕事をお願いできるように、仕事をデザインする技術のひとつとして、発注スキルを高めていきたいと思っている今日この頃なのである。