以前勤めていた会社で管理職をやっていた頃、人事評価や社員採用の際によく「コミュニケーション能力が高いか低いか」的な視点で人物評価を議論する機会が多かった。
例えば、「彼はスキルや実績はそれなりにあると思うけど、コミュニケーション能力がちょっとねぇ」的な言い回しで、結果、低い評価に落ち着くこともあった。
嫌な同僚について上司に相談する際、「彼のコミュニケーション能力には少し問題があるように思います」みたいな言い方をする人もいた。
とにかく仕事における人物評価に「コミュニケーション能力」というのがクローズアップされがちである。
しかし、一方で、こんな疑問も起こってくる。
実際のところ、仕事におけるコミュニケーション能力の高い、低いって、一体何?
仕事におけるコミュニケーション能力って、そもそもなんで必要なの?あげたところでどんな得があるのだろうか?
今回、そんな疑問について、僕なりの考えを整理してみた。
いくつかのコツは、人や本から教えられたコツだし、いくつかのコツは自分なりの経験を踏まえて見つけたコツでもある。
「仕事でいい成果をあげるためのコミュニケーション能力って、いったいどうすればあげられるのだろう?」
そんなことについて興味をもっている、迷えるビジネスパーソンに、何らかの参考になれば幸いである。
(僕自身のコミュニケーション能力がどれほどのものか、ということは一旦横に置いといて)
仕事でコミュニケーション能力をあげるコツ
結論)コミュニケーション能力の正体は「共感ポイントを創り出す力」
最初に結論を書くと、コミュニケーション能力とは何かと問われたら「共感ポイントを創り出す力」のことなんじゃないかな、と僕は考えている。
コミュニケーション能力を、自分の考えを適切に相手に理解してもらう能力と定義するのはあくまで基本であって、ゴールは「相手から共感を引き出すこと」だと思っている。
そもそも仕事におけるコミュニケーションの目的は「自分にとって有利な状況になるように、相手の意識や行動を自分の意図する形にかえてもらうこと」ではないだろうか?
そして、人は感情の生き物である。相手を説得できたとしても、理屈だけで人は本気で動かない。そこには、相手との関係性が大きく関係する。そこで大切なのが「共感」なんだと思う。
なので、これから紹介するコミュニケーション能力をあげるコツに共通しているポイントとしては、「いかに相手の共感を引き出していくか」というのが根底にある。
コミュニケーション能力を構成する3つの力
コミュニケーション能力は以下の3つに分解することができる。
1.聞く力
2.伝える力
3.共感ポイントを一緒に創り出す力
仕事におけるコミュニケーションの流れに落とし込むと、例えばこんな感じ。
1.まず相手の話を聞き、相手を洞察する。
2.次に、相手の話の流れにそった形で、今度はこちらの話を伝えて、自分の話に興味を持ってもらう。
3.最後に、意見交換をしながら、共感ポイントを引き出して、具体的な次の一歩につなげる。
それぞれのステップにおいて、どのように仕事上のコミュニケーション能力をあげることができるか、僕なりに大切だと思うコツを以下、共有したいと思う。
1.聞く力
仕事上で相手の話を聞く目的は、相手の状況を知るためだけではない。
それ以上に「あなたの話を理解している、興味がある」という態度を、聞く姿勢を通じて話し手に伝えることの方が大切だと思っている。
なので、相手の話を聞く際は、以下の点に気をつけている。
・顔の表情を用意する。
ちゃんと相手の顔を見て、できるだけ無表情にならないようにして話を聞く。顔は口ほどにモノを言っているモノなのである。
・相手の立場を妄想しながら、その立場になったつもりで話を理解していく。
相手はどんな立場でどう思いながら今の話をしているのか、相手を洞察していくことが大切。ここでは相手はどんな言葉(単語)を使って、話をしているのか、相手がよく使う言葉も把握しておくことが、今後のコミュニケーションの鍵にもなる。
・質問をする場合は、相手の立場に対する共感や理解を表明しながら、聞いた話の延長線にあたるプラスワンを聞く。
そういった質問をすることによって、相手に「この人は私の話を理解してくれている」という印象を相手に与えることができる。次に自分の話を聞いてもらうための信頼関係もそんな質問から作ることができる。
2.伝える力
仕事上で自分の話を伝えるポイントは、自分の主張を「理解」してもらうことではなく、「納得」してもらうことである。
「納得」は他人事の距離だと生まれない。自分事の視点で話を聞いてもらう必要がある。
そのためには、自分視点での話ではなく、聞く相手視点での話に変換しなければいけないし、それが相手にとってのメリットや課題解決につながっていなければいけない。
なので、僕的には以下の点に気をつけている。
・ポジティブに話す。
当たり前だけど、人は自分の明るい未来につながる話が好きである。これから話すことは、あなたにとって明るい未来につながるはずだという前向きな姿勢で話し始めることがまずは大切だと思う。
・相手の言葉で話す。
前段階で聞いた相手の話を踏まえて、相手の使っている単語もうまく流用しながら、できるだけ相手の言葉や視点で話していくことが大切だと思う。
自分の話が相手の課題解決につながっている、というロジックが作れれば成功である。
・誠実に正直に話す。
自分の話の中で、自分の存在を誇張せず、一方で卑下もせず、誠実に自分のスタンスやできることを説明することも大切だと思う。
3.共感ポイントを創り出す力
ゴールは相手から信頼や共感を引き出し、これからの具体的な一歩目の行動を約束してもらうことである。
そのために僕的には以下の点に気をつけている。
・相手に自分の腹を見せる
これは前述の「誠実に正直に話す」の延長だが、自分の弱いところを相手に見せることも信頼感を得る(距離を縮める)ために大切である。
ただし、自己開示は少しずつ。自分から自己開示をして、相手の自己開示を待って、次の自己開示をする、といった感じかもしれない。
・相手を勇気づける
相手に何らかの意識や行動の変容をリクエストした場合、相手はその変化を今の自分に起こすことに対して躊躇するかもしれない。そのために、勇気づけるコミュニケーションも必要である。ポイントは、私も一緒にそれに取り組むのだという、スタンスが必要かな、と思う。
・踏み出しやすい具体的な一歩目を提案する。
まず、これからお互いやっていく最初の一歩目は、何だったら踏み込みやすいか、踏み込みやすい一歩目案を提示することが最後に大切だと思う。
これによって、今までのコミュニケーションが、お互い今後のwin-winにつながる、意味のあるものに位置づけられる。
まとめ:正直なところ、仕事でコミュニケーション能力をあげるって、面倒くさい作業ではある。
仕事でのコミュニケーション能力とは、自分の意図した未来にむけて、必要な相手に意識や行動を変えてもらう(要は相手の力を借りる)ためのスキルセットだと僕は位置づけている。
なので、厳密には、上手にプレゼンや質疑応答ができたり、八方美人的にみんなの期待に応える振る舞いをする必要もないと思っている。
世の中的には、忖度する力や同調圧力にうまくかかわっていく力をコミュニケーション能力が高いと表現される時もあるけど、それだと結果、自分が疲弊してしまうことになる。戦術的ではあるけど戦略的ではない。
ぜひ、自分の目的のために戦略的にコミュニケーション能力を磨いていければと思う今日この頃である。
でも、一番いいのは、そもそも気兼ねせずにやりとりできる仲間と仕事することなんだけどね。