プロジェクト型の組織で考える。

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新規の取引先からよく聞かれる質問のひとつに、「御社の社員は何名ですか?」という質問がある。

正規雇用の社員だけをカウントするのであれば、ディレクターバンクの場合、こういう答えになる。ー「ゼロです」

ただ、そう答えると相手がびっくりすると思うので、実際には「2人です」と答えている。僕と鶴久さんの2人の経営メンバーの数である。

それでも多少動揺されるので、必ず補足説明をしている。こんな感じで。

「基本、僕たちはフリーランスのWebディレクターの方々と業務委託契約を個別に結んで、仕事をしています」

フリーランス人材との「アライアンス」を組む時代へ

新型コロナの影響で、リモートワークを始めとした新しい働き方が一気に浸透しはじめた。

僕たちは基本、リモートワークで企業のWebマーケティング運用の支援をしているのだけど、この1年でそういった業態の理解が進み、許容されやすい雰囲気に変わっていった。

僕たちは、プロジェクト毎に最適な人材をアレンジしてチームビルディングを行い、都度PDCAを回しながら、企業のWebマーケティング担当者に伴走していく。

ただ、アサインする人材がディレクターバンクの「正社員」ではなく、「フリーランス」という点において、たまに不安な反応を示されるお客さんがいる。

そんな時は、契約面をはじめ人材面は問題ない(優秀な人材をアサインしている)という説明は丁寧にさせていただいている。

ここ数年で「社員としての働き方」を選ばずに、フリーランスとしての働き方を選択する人が増えてきている。

インターネットの普及によって、IT系を中心に、意欲と能力のある個人は、自らが個人事業主として自力でビジネスができる環境を手に入れることができた、という背景がひとつ。

もうひとつは、終身雇用、年功序列、正規雇用社員といった、旧来の閉鎖的な日本の雇用制度が、少子高齢化と国際競争力の低下で、会社側でも維持できなくなってきたという背景がひとつ。

フリーランス化の流れは、そんな労使双方の必然性によって生まれ、広がりを見せている。

そんな中、事業運営の視点で大切になってくるのは、フリーランスのような自社の社員じゃない人をどうやって活用していくのか?という視点である。

既存社員だけで構成する組織では、十分な競争力を保つことができないかもしれない。特にWebマーケティングをはじめ、IT分野に関する人材不足は深刻である。

今回の新型コロナもそうだが、外部環境が大きく変化した場合、それに対応した柔軟な事業運営を実現させるには、既存の人材リソースだけでは手当ができない場合もある。

「外注」とか「下請け」といった表現が昔からあるが、僕はこれからの時代は、内と外、上と下、みたいな線引を前提として外部人材に仕事を発注するのではなく、どうやって自社内のチームメンバーとして、シームレスにそのような人材を組み込めるか、という感覚も、加えて今後の事業運営にとって大切なポイントになってくるのではないか、と考えている。

言うなれば、外部フリーランス人材と「アライアンスを組む」という感覚である。

小さなプロジェクト型チームで、トライアンドエラーを繰り返す

ある程度、型が決まっていて右肩上がりの成長が見えている時代は、全体最適を考えた機能別組織であったり、ピラミッド型組織といった組織構成が、合理的に機能していた。

しかし、複雑な構成要素によって外部環境が大きく変化していくような現在においては、それぞれの外部環境にスピーディーに現場対応できる、少数精鋭のプロジェクト型チームのほうが成功確率が高い。

それらのプロジェクトチームには、目指すべきゴールがあり、そこに向けた活動目的と目標がある。そして目標を達成するための期間も区切られている。

所属しているメンバーは、それらのミッションを共有した上で、ゴールに向けて、自分の持ち場で価値を発揮していく。

トップダウンの指示待ち体制ではなく、そんな個々の人間の協業(アライアンス)によって、チームが運営されていく。

プロジェクトチームがうまく稼働する成功要因は、「どれだけ自立した意識をもった人間が集まって、それぞれの自己裁量のもとで活動できているか?」だと僕は考えている。

よく言われる表現に「自分事化して動けている人間がそのチームにいるか?」ってヤツである。「熱量」という言葉でも表現されるかもしれない。

例え失敗があったとしても、プロアクティブに活動している中で起こったのだとすれば、だいたいリカバリーはできる。縮こまる必要はない。

そんな中でいかにスピーディーにトライアンドエラーを繰り返していくかが、成功への近道なんだと思う。

ひとつの大きなグループを育てていく形から、小さなプロジェクトチームをいくつも育てていく形へ

「グループとチームは違う」−昔、そんな話を聞いたことがあった。

単に同じ属性でまとめられただけの集団がグループであり、目的が存在する(そしてメンバー内で共有されている)集団がチームである。確かそんな話だった。

ディレクターバンク自体も、社員という1つの属性グループを前提に運営するのではなく、どちらかというと、様々な働き方を希望する人たちが参加しやすい小さなプロジェクトチームをいくつも作っていくような組織運営をしていきたいと考えている。

なので、以前は、ディレクターバンクも社員を雇うことを考えたこともあったけど、今のところ結局、社員は雇っていない。正直なところ、雇わなくても今のところ、なんとかやれている。

ひとつの大きなグループを育てていく形から、小さなプロジェクトチームをいくつも育てていく形へ。

僕的には、これからの事業運営は、そんな方向に向かっているんじゃないかな、と思っている。

もしかして会社という単位自体も一つのプロジェクトチームくらいの大きさで十分かもしれない。

働き方はひとつではない、ということ。そして、多様な働き方を吸収していくこと。それが組織としての持続力と強みの源泉になっていくのだと思う。

そして、それぞれ独立した個人が、アライアンスを柔軟に組み立てていける装置として、ディレクターバンクというコミュニティに魅力を感じてくれれば嬉しいな、と思う今日この頃なのである。