やらない理由はひとつ

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「やらない理由はひとつ、それは、単にやりたくない、ってことだけですよ」
飲食店等のサービス業の経営者を中心にネット活用サポートを担当していた、ある商工会議所の課長さんから聞いた話だ。

2〜3年ほど前、前職で地方の中小企業のネット活用について勉強するためにその方にお会いした。
前段の発言は、「中小、零細企業でネット活用に取り組めない障壁はどこにあるのでしょうか?」といった僕の質問に対する答えだ。
その街は昔、重工業の街だったが、大手企業は撤退し、人口減となり、地元でサービス業を行う商店街の経営者をメインとした商工会議所となっていた。
以下、その方の話の続き。
「ネット活用されていない経営者さんに、なぜ活用しないのか質問をすると、だいたい3パターンの答えに集約されます。
1つは取り組む時間がない。2つめに知識がない。3つめにお金がない、です」
「私から見て、どれも理由になってないと思っています。そもそも自分の商売のためですからね。自分の商店街を歩いている人だけで商売が成り立たないなら、時間がないとか知識がないとか言ってられないと思うんですよ。知識なら、ここに来ればなんでもサポートしますし、ネットで調べればいろんな情報もありますし」
「あと、お金がないってのも言い訳です。そもそもそれはコストではなく、集客のための投資なので、売上に戻って来るし、ネットなら1万円で広告も出せるはずです」
その方の話は、ネットでサービスを提供している僕たちに対しても向けられた。
「うちのサービスは無料というのを全面に出してプロモーションしていく、ネットのサービス提供者さんのスタンスにも問題はあると思いますよ。
実際はそれで売上をあげようと思うと、有料版に入ったり、広告出稿したり、成果ベースで手数料払わなければいけないサービスがほとんどですからね。
サービス提供者さんは、利用料が無料とか言う前に、そのサービスの価値や効果が何なのか、きちんと説明すべきだと思いますよ。
でないと、現場でそれを推進しようとする我々が苦労するんですよ」
その方は、最後に「当事者本人が、もっと必死に儲けたいという気持ちになってもらうことが一番大切」というお話をされていた。
やるべきなのに、やらない理由はひとつ。それは、都合の悪い現実に目を背けていたいと思う、当事者の意識にあるのだろう。
そこに無料サービスでアプローチしても、例えば国や行政が補助金を出したとしても、ほとんど意味がないのだろう。
当たり前だけど、サービス提供者も、提供する相手をきちんと選別しなけければイカンと思った。やる気のない人に無料サービスを勧めるより、やる気のある人に有償サービスを勧めた方がお互い幸せだ。特に弱小のサービス提供者であればあるほど。

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