サラリーマンを辞め、起業して今年の夏で7年になる。
何か成功した訳じゃないけど、自分なりにいろんな試行錯誤をしつつ、そして先輩経営者の方たちを見て勉強しつつ、起業に必要なマインドセットって、こんなところが大切なんじゃないかなぁ、と思うポイントをまとめてみたいと思う。
起業に限らず、新しい挑戦を始めようと考えている人にも当てはまる部分があるかもしれない。
僕自身、現時点でこれらすべてできているか?というと、決してそんなことはない。これはどちらかというと、僕自身の自己点検リストでもある。
エントロピー増大の法則、というのがある。
「エントロピー」というのは、不確実性や無秩序の度合いを示す言葉であり、「エントロピー増大の法則」とは、物事は放っておくと、無秩序な方向に向かうエネルギーが発生する、という原則である。
平家物語の「諸行無常の響きあり」とか「盛者必衰の理をあらはす」というのは、基本、この「エントロピー増大の法則」の一形態である。
新しいことを始めるというのは、ある種、このエントロピー増大の法則にあらがうことであり、新しいことを始めている最中でも気を抜くと、いつしかこのエントロピー増大の方向に自分が流されてしまう。
そのための錨(いかり)として、これらのマインドセットのポイントを、僕自身、定期的に見返している。
前置きが長くなったけど、そんなポイントを7つ、今回、紹介したいと思う。なんらかの参考になれば幸いである。
1.謙虚かどうか?過去のプライドと過去の会社の看板はきちんと捨てて、今までの人間関係もゼロリセットして再構築する。
とにかく、自分で起業する際は、過去の栄光とプライドと看板はきちんと捨てて、謙虚にいろんな人と接すること。昔の後輩や部下に対しても、昔のような偉そうな言葉遣いをしたりしないこと。苦笑
今までは、会社の看板や会社から与えられたポジションの役回りを演じてたに過ぎない。今は何の実績もない自分の看板でビジネスをしているのだから、ここを履き違えてはいけない。
今までの実績やキャリアといった資産をベースに、自分で起業しようと考えている人にとっては、上記の話は若干戸惑うかもしれない。
でも、そのキャリアや実績というのは、周りの人から見ると、あなた個人のもの、というより、その会社だから積ませてもらえたキャリア、だったり、その会社の実績としか見られていない可能性がある。
会社の外に出ればわかるけど、会社の看板の威力というのは、本当に大きい。
なので、自分で起業する際はゼロリセットして、新しく自分の名前で看板を作り直そう。
2.行動のアウトプットから学ぶ癖をつける。勉強のインプットから始めない。
ビジネスに必要な知識は、勉強からではなく、行動や体験から学ぶほうが断然効率がいいし、成功確率も上がる。勉強するところから始めてはいけない。まず行動から。
できれば、何もわからない状態でとりあえずやってみて、何につまづいたのか体感してから、その回避方法を調べる的な、行動→学習パターンが効率的。
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3.積極的に人に会う。どんな人にも丁寧な言葉遣いを心がける。資料ではなく自分の思いをきちんと伝える。
どんなビジネスも起点は人との出会いから。そして年齢や立場など関係なしに、どんな人にも丁寧な言葉遣いをすることは本当に大切。偉そうな言葉遣いや、マウントを取るような言動をして得することは1つも無い。
人は「話の内容は覚えていなくても、相手にどんな印象を持ったか」そんな記憶だけはずっと覚えている。情報ではなく、自分の思いを伝えることを優先するコミュニケーションが大切。
こんなこと言ったら元も子もないかもしれないけど、個人事業を含め、中小企業が手掛けている商品やサービスに、そこまで大きな差はない。お客様は、自分が手掛けている商品やサービスの中身より、それを手掛けている会社の代表者(自分自身)の人間性を見て、購入の意思決定をしていることが多い。
「幸運」というのは、いつも誰かによって運ばれてくるものである。そんな人に出会えるか?出会えたとしたら、その人が自分に「幸運」を渡そうという気持ちになれるか?というのが大切だと思う。
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4.いいところはすぐに真似をする。アドバイスを素直に聞き入れてまずは試してみる。
この柔軟性はホント大切。朝令暮改ウェルカム。これらの行動の弊害になる、自分のプライドなんかはできるだけ捨ててしまおう。いっぱいいろんな人のいいところを真似して、実際の行動に移してみよう。
特に自分より若い人のやっていることは、学ぶべきところがたくさんある。人生の先輩として自分が若い人に何か教えてあげようなんて気分になっている場合ではない。
よく言われることだけど、情報やアイデアって知ってたり思いついたりすることに意味はほとんどなくて、それをベースに何か行動することでようやく意味が出てくる。そしてその行動の中で、自分なりの気づきや改善を反映させて、自分なりの新しいフォーマットを完成させることでようやく競争優位性が生まれる。
まさに守破離のフレームワークである。人は自分のプライドが邪魔をして、第一ステップの「守(いいところを真似る。実行に移す)」ことすら、ほとんどの人はしない。
5.完全を求めない。質より量。とにかく時間を大切にする。
やるべきことを思いついたら、できるだけすぐに開始。準備に時間をできるだけ使わない。とにかく打席に多く立つ。その中でいい感触があるものだけを、後で選別して、地道に磨き続ける。
手塚治虫にしろ秋元康にしろ、同時代の他者と比べて圧倒的な量の上に一握りの成功を発生させている。
6.毎日の習慣を作る。地道を積み重ね、きちんと改善していく。
大切な業務は1日も欠かさず、毎日やる。自分にくじけそうなるから、大切なことは「やる日」と「やらない日」を作らずに、できるだけ「毎日」やる。
そして、きちんと結果を見直して改善していく。その業務の積み重ねが、自社のビジネス資産になることをイメージしながら、地道に続けていく。
石の上にも3年っていうけど、本当に3年はやり続けたほうがいい。
人間を作っていく構成要素は「習慣」と「隣人」。どんな習慣を重ねて、どんな人と毎日過ごしていくかで、何歳からでも自分を変えられる。
7.時間を味方につける。
人生は有限である。そしてビジネスを成功させるためには秘訣は、時間をうまく味方につけることが大切だなぁ、と最近よく思う。
時間を味方につける視点は2つある。
一つは、自社の強みや資産を「複利思考」で考えるという視点。
アインシュタインいわく、「複利は人類最大の発明」とのこと。
「複利」という考え方は、お金だけでなく、自分の経験やネット上のコンテンツ、ビジネスプロセスといった無形固定資産にも複利的な増幅をするものがある。
今自分が使っている時間で生産しているものは、きちんと無形固定資産化しているか?そして、それらは複利的な増幅をしているか?そんな視点でPDCAをまわすことはとても大切だと思う。
無形固定資産を複利的に増幅するトリガーのひとつが「仕組み化」になるのだと思う。
そういった経験や知見の資産を今も貯めているか?複利にするための「仕組み化」ができているか?振り返ることは大切だと思う。
もう一つの視点は、継続可能なキャッシュフロービジネスモデルで事業を組み立てるという視点。
ビジネスの勝敗はキャッシュフローモデルで決まる。
先行投資が大きい、売掛金回収が長い、要はキャッシュフローが悪いビジネスをそもそも選択しない。
直近のキャッシュ・フローがまわり始めたら、その後でストックビジネスをプラスオンしていく。はじめからストックビジネスから始めると、だいたいの場合、直近の運転資金の目処がつかなくなる。
これらの視点で、まず自分たちが継続してビジネスを続けられるキャッシュフローポジションを構築したら、前述した無形固定資産の複利化で、競争優位性を育んでいく。
そうすると、まずは負けない状況を自社で作ることができる。
そしてだいたいの競争というのは、競争相手が自ら事業継続できなくなって市場撤退することによって、勝敗が決まることが多い。
大きな資本や先行投資で市場参入した企業ほど、その大きな体制を維持することができずに、早く撤退することが多い。
要はビジネスとは我慢比べなのである。
小さな資本でビジネスを始める場合は、とにかく「負けないポジションでトライアンドエラーを繰り返す」戦略が有効だと思う。
そのためには、ヘルシーなビジネス形態で市場参入し、キャッシュフローと無形固定資産の複利化という2つのポイントで時間を味方につけることが大切なんだと思う。
以上、起業に必要なマインドセット、僕なりに学んだところをつらつらと書いてみた。
マインドセットって、要は心得ってやつなので、あまりこの種の話ばかりが先走ると説教臭くなりがちなんだけど、言いたいことは全く逆で、とにかく謙虚さが大切、ということなのである。
謙虚イズベスト。そして行動は大胆に。ライフ・イズ・ショート。
お互いがんばりましょう。