良い戦略、悪い戦略

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良い戦略、悪い戦略」という本を読んだ。

今まで様々な戦略の本を読んできて、抽象度の高い「戦略」という言葉に、言わんとしていることはわかるけど、具体的には何よ、みたいなところが解決されないまま終わるという経験が個人的には多かった。

で、この本である。

多くの実例を交えながら、戦略の本質(具体的な効能と作り方)について解説されている。具体的にはこう、という部分がかなり具体的に網羅されている良書だと思う。

  • 良い戦略にはどんな共通点があるのか?
  • 一方、悪い戦略にはどんな特徴があるのか?
  • 良い戦略を作るポイントとは何か?

そんなところを「良い戦略、悪い戦略」という本から、僕なりに参考になったポイントをピックアップして、以下紹介したいと思う。

目次

良い戦略、悪い戦略

1.良い戦略とは?

良い戦略には、重要な1つの結果を出すために、的を絞った方針が示され、リソースを投入した上で、具体的な行動に直結する道筋が示されている。

目的は「重要な1つの結果を出す」ことにある。いくつもの目標を立ててはいけない。

なので、良い戦略にまず必要なのは、様々な要求に「ノー」と言えるリーダーの存在。「何をするか」と同じくらい「何をしないか」が、良い戦略には必要となる。

そして、会社組織ではありがちだが、予算編成とセットにして年中行事のように、戦略を立てる慣習はおかしい、と筆者は言っている。あくまで戦略とは定常的に立てるものでなく、必要に応じて立てるべきものである。

例えば、全社一丸となるような戦略は、得られるメリットが大きい時だけに行うべきで、通常は各現場の自主性に任せないと現場に活気がなくなってしまう。

通常の活動はそれぞれの部署に委ね、ここぞというときに行動を一点集中するのが賢い戦略であって、賢い組織である。

良い戦略に備わっている価値は大きく2つある。

1つは、的を一点に絞ってリソースを集中させることによって、「新たな強みを創り出すことができる」という点。(例:ジョブズが1997年に復帰した後のAppleの再建戦略)

2つめは、まったく新しい角度からものごとを見直すことによって、「隠れた強みやチャンスを発見することができる」という点。(例:後発参入のスーパーだったウォルマートの成長戦略)

2.悪い戦略の4つの特徴

1.空疎である。

内容がない。華美な言葉や不必要に難解な表現を使い、高度な戦略思考の産物のような幻想を与える。わかりきったことを必要以上に複雑に見せかけているだけ。

2.重大な問題に取り組んでいない。

重大な問題について、見ないふりをしているか、甘く見積もって、取り組む対象からそもそも外している。

3.目標を戦略と取り違えている。

願望や希望的観測だけを語って、具体的な道筋が示されていない。

4.間違った戦略目標を掲げている。

間違った戦略目標例)

  • 寄せ集めの目標 − いろんなことを詰め込みすぎてごった煮状態になっている目標リスト
  • 非現実的な目標 − 単に願望を語るだけの目標値

3.良い戦略の基本構造

良い戦略とは、十分な根拠に立脚したしっかりとした基本構造(カーネル :核)を持っており、一貫した行動に直結している。

良い戦略のカーネルには、以下の3つの要素から成り立っている。

良い戦略の3つの基本構造

1.診断

取り組むべき課題が見極められている。

良い診断では、重要な問題点があぶり出されており、複雑に絡み合った状況が明快に解きほぐされている。

2.基本方針

診断で見つかった課題に対して、どう取り組むか、大きな方向性と行動方針が示されている。

「何をやるか?」を示すだけでなく、「なぜやるのか?」「どうやるのか?」も提示されている。

3.行動

基本方針を実行するために設計された一貫性のある一連の行動がコーディネートされている。

行動をコーディネートするには、明確で実行可能な目標(近い目標)を立てるのが良い方法。

4.良い戦略を作るポイント

テコ入れ効果

ここぞというタイミングでリソースを一点に集中させることによって、幾何級数的に大きな効果をもたらす。これをテコ入れ効果(レバレッジ)という。

限られているリソースを集中投下したときの見返りは大きい。リソースに限りがあるという条件のほうが、投入する対象やタイミングを厳しく吟味せざるを得ないので、その集中力によって大きな成果を生みやすい。

どこに、どの期間、どのような形で限りあるリソースを集中させるか、厳しく考え抜くことによってレバレッジポイントを見つける。

近い目標

近い目標とは、手の届く距離にあって十分に実現可能な目標を意味する。高い目標であってよいが、達成不可能ではいけない。

近い目標は、明快で、最も効果の上がる一点に集中した結果の成果設定でなければいけない。

近い目標を設定することによって、各現場の行動に迷いがなくなり、行動を組織化することが可能になる。

将来が不確実であるほど、遠くを見通すよりも「足場を固めて次の選択肢を増やす」ために、近い目標の設定が重要となる。

鎖構造

最も弱い箇所によって全体の性能が決まってしまうシステム構造を、鎖構造という。

自社の弱みを改善するには、時間はかかるが、一番弱い鎖の輪から順番にひとつずつ改善していくことによって、全体の鎖の強度が改善する。(改善しやすいものから改善しても全体の鎖は強くならない)

一方で、強力なリーダーシップにより巧みな鎖構造を作ってしまえば、他社が容易に真似ができない強みを持った、強い鎖構造を持った事業体を実現することが可能となる。

フォーカス

あるセグメントにターゲットを定め、そこにより高い価値を提供する戦略を「フォーカス戦略」という。メリットは2つある。

1つは、社内の各リソースを1つのターゲットに向けてまとめることによって、今までになかった相互作用を発生させ、より大きな提供価値を新たに創り出すことができる。

もうひとつは、適切なターゲットに限りあるリソースを一点集中させることによって、テコ入れ効果を狙うことができる。

優位性

良い戦略には、持続可能な競争優位を確立するプログラムが仕込まれている。

持続可能な競争優位の実現には、競争相手に容易に真似されない「隔離メカニズム」が存在する。

例えば、一定期間の独占を可能にする特許、評判、取引関係や人脈、暗黙知、熟練技能などが、それにあたる。

うねりにうまく乗る

市場変化のうねりをうまく捉え、どのポイントに乗るべきか設計する。

新しいうねりをいち早く察知し、そのうねりによって、何が新しい勝者の条件になっていくのかを見極め、そのポイントにたどり着くためのリソース配分を考える。

慣性とエントロピー

「慣性」とは、動いている物体がそのまま動き続ける性質をいう。大型タンカーが停止するまでに1キロメール以上かかるのは、慣性が働いているから。

「エントロピー」とは、不確実性や無秩序の度合いを示す言葉であり、「エントロピー増大の法則」とは、物事は放っておくと、無秩序な方向に向かうという原則である。どんな組織も時間が立てば秩序が緩み、陳腐化する。

慣性とエントロピーは戦略にとって重要な意味を持つ。

1つは、戦略がうまくいくときは、ライバルの慣性と非効率に助けられている場合が多い。

もう一つは、組織によって最大の問題は、外からやってくる脅威ではなく、内にあるエントロピーと慣性である。いくら良い戦略を実行して、一時的にいい状態になった組織であったとしても、その後、長い時間の中で、必ず秩序が緩み、活動の焦点がぼやけてくる。自社内でエントロピーが増大していると感じたら、組織の刷新をおこなうべき。

5.戦略思考のテクニック

リストを作成する

重要かつ実行可能なリストを作る。戦略的になるためには、近視眼的な見方をなくし、広い視野を持った上で、本当にやらなくてはならないことを明確にする必要がある。

第一感を疑う癖をつける

人間は何かを思いつくと、そのあとは、それを正当化することにエネルギーを使うようになる。

自分が思いついた第一感に対し、常に自分で疑義をかける習慣をつける。(あの人だったら、この案についてどう反論するかな?と頭の中で妄想するのもテクニックのひとつ)

6.まとめ:戦略とはPDCA設計そのものである。

最後に整理すると、良い戦略を作るコアとして大切なことは、

  • 診断:取り組むべき重要な課題設定にフォーカスできているか?
  • 基本方針:「何をやるのか?」「なぜやるのか?」「どうやるのか?」が明確になっているか?自社の強みを活かす設計ができているか?
  • 行動:具体的な行動につながる道筋が示されているか?明確で実行可能な目標(近い目標)が立てられているか?

という点にまとめられる。

そして、これらの戦略とはあくまで仮説であり、実際には、常に実行しながら修正していく必要がある、とのこと。

行動していく中で新たな現象に出くわすことによって、今までの仮説が覆されることもある。

その現象をアノマリー(異常)というらしい。

アノマリーというのは、やっかいな存在だが、未知の領域を開拓するための貴重なヒントという見方もできる。

そこでまた、戦略の修正をおこなっていく。

(スターバックスの初期も、当初の戦略仮説に対するアノマリーに出会ったことによって、事業コンセプトを変更し、成功した)

以下、この本を読んだ僕の雑感。

戦略とはまさにPDCAサイクルそのものであり、いかに地道に焦点のあったPDCAをすばやく回し続けられるかが、戦略が求める本質そのものだと思った。

戦略は、立案時の作業だけが注目されがちだが、実際のところ、実行をいかに丁寧におこなっていくか、そして、修正(新たに発生した問題に対する本質的な解決)を逃げずに行っていくかが、次の戦略の立案の思考を深める大きな分水嶺になるのだと思う。

最後に。

この記事は、「良い戦略、悪い戦略」という本の中で、参考になった一部のエッセンスだけを僕なりに紹介しているものであり、本書の全体を網羅しているものではありません。

この記事を読んで興味を持った方は、直接本を読むともっと参考になると思うので、ぜひ買って読まれることをオススメします。


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