ミッション・ビジョン・バリュー・パーパスの意味について今一度整理してみる。

       
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きっかけは、経営者向けのセミナーだった。

「経営者のみなさん、御社のビジョンは何ですか?そのビジョンはいつ実現させる予定ですか?」

経営コンサルタントの講師は、ほとんどが会社経営者だと思われるオーディエンスに向けて、こう切り出した。

「ビジョンはできるだけ定量的、かつ具体的にしてください。そして、実現する日にちを決めてください。経営戦略は、その期日からの逆線表で組み立てていきます。ビジョンが曖昧だと、経営戦略は作れません」

うーむ、なるほど、そうかも。考えてみれば、僕も、Webマーケティング支援を行う際に、お客さんに同じようなことを言っている。(Webマーケティングのゴールを明確にしてから、戦略設計の支援をおこなっている)

会社のビジョンは無いわけではないのだけど、定量的か?、実現する期日を決めているか?と問われると自信がない。

良くも悪くも人の話をすぐ信じる僕は、さっそく自分の会社のビジョンを見直そうと、ビジョンの作り方について、改めてググってみた。

「ビジョンとは?」

「ビジョン 作り方」

検索すると、いろんな情報が引っかかってくる。

そして、ビジョンだけでなく、ミッション、バリュー、パーパスと、様々な経営方針を構成する要素の解説記事が引っかかってきた。

それらの言葉の解説記事を読み進めていく一方で、それらの概念が、かなりの確率で、うまく消化されずに、とっ散らかったまま、机上の空論化している会社が多いこともわかってきた。

今回は、そんなミッション、ビジョン、バリュー、パーパスについて、僕なりに理解したエッセンスを整理してこのメモに残しておきたいと思う。

まず、ミッション、ビジョン、バリューの基本を押さえる。

まず、ミッション、ビジョン、バリュー(MVVモデルというらしい)の整理から。

MVVモデルとは、現代経営学やマネジメントの発明者としても知られる経営学者、ピーター・F・ドラッカーが2003年に提唱を始めた、企業の経営方針を言い表すフレームワークとのこと。

意外に新しい。しかもいきなり3つの要素で組み立てろという話になっている。

簡単に整理すると、こんな感じ。

ミッション:「事業目的」

ビジョン:「事業目標」。ミッションを実現させた時の状態

バリュー:事業目標達成のために組織内のメンバーで習慣化したい行動原則と、価値判断基準

なんとなく言わんとしていることはわからないではないけど、さっそく抽象度が高い。

さっそく問題にぶち当たる。ミッションを二度語っている問題(ミッション・ミッション・バリュー問題)

MVVのフレームワークの問題点のひとつに、「ミッションとビジョンの違いがうまく整理できずに、ミッションを二度語っている問題(ミッション・ミッション・バリュー問題)」を指摘されている記事に出会った。

例えば、ミッション(事業目的)が抽象的な表現すぎて、ビジョン(事業目標)のところで再びミッションを言い換えてみたり、ミッションを補足するような内容になってしまったりする例。

ありがちかも。このあたりの分かりづらさが、MVVのモデルにはあるような気がする。

本記事では、これを解決するヒントとして、

案1)ミッションとビジョンを一本化して、MV(ミッション・バリュー)型だけにする

案2)ミッションは「主観的」、ビジョンは「客観的」な視点で「なりたい姿」を定義し直して、MVVを再整理する。

の2タイプの提案をされている。

前段の経営戦略コンサルタントの方の話を踏まえると、経営戦略を作る前提として、ビジョンが必要なので、案2を軸に整理すべきなのだろう。

再度、ミッション、ビジョン、バリューを整理する

これらを踏まえて、再度、MVVを整理するとこんな感じ。

ミッション:「事業目的」。なりたい姿を、「主観的な視点」で説明。

ビジョン:「事業目標」。なりたい姿を、「客観的な視点、かつ定量的な目標、期日」で説明。

バリュー:事業目標達成のために組織内のメンバーで習慣化したい行動原則と、価値判断基準。

ここまでがMVVモデルの僕なりの整理。

さらにここに「パーパス」という招かねざる客(今の僕の心境)が、更に登場することになる。。。

パーパスが新たに出てきた背景

パーパスを一言で定義すると、「なぜ、我々は社会に存在するか?」。

前述のMVVが自分たち軸での定義だとしたら、パーパスは社会から観た自分たちという軸で、存在意義を規定するものらしい。(「社会」って誰よ、というツッコミがすぐ思い浮かんでしまうけど、とりあえず)

日本で昔から言われている、「売り手によし、買い手によし、世間によし」を示した「三方よし」の考え方に近い。

この背景には、2019年あたりから米国を中心に、ビジネスや経営に対する考え方を見直していこうという世界的な潮流があるとのこと。

具体的に言うと、それまで株主中心的な経営の考え方から、それ以外のステークホルダー(顧客や従業員、パートナー企業、地域コミュニティ、環境や将来世代)の利益も考えた「ステークホルダー資本主義」への移行がそこでは唱えられている、とのこと。

そう言われると、パーパスは、上場している大企業の中でのバズワード的な言葉であって、中小企業の経営者とかからすると、ピンと来ないコンセプトかもしれない。

ただ、これからこういった視点で自社の存在意義を語れると、同じ価値観を持った人を採用しやすくなったり、ビジネスパートナーを開拓しやすくなったりするかもしれない。

再度、ミッション、ビジョン、バリュー、パーパスを整理する

先程のMVVとマージして、関係性を整理すると、こんな感じになる。

ミッション:「事業目的」。なりたい姿を、主観的な視点で説明。→ Where(どこを目指すか?)

ビジョン:「事業目標」。なりたい姿を、客観的な視点(定量的な目標と具体的な表現)で説明。→ What(何を目指すか?)

バリュー:事業目標達成のために組織内のメンバーで習慣化したい行動原則と、価値判断基準。 → how(どう進めるか?)

パーパス:社会からみた存在理由。→ Why(なぜそれに取り組むのか?)

まとめと蛇足:経営方針を言語化する本質

なぜ、こんなにもいろんな視点で、会社の経営方針を言い表す言葉を考える必要があるのだろうか?

僕なりに考えるに、経営方針を言語化する本質は2つあると思う。

1つは、今の立ち位置に問題ないことを確認したいという経営者の不安心理。

経営方針を言語化することによって、自分たちの今の立ち位置やこれから向かう方向が明確になると同時に、様々な視点でも問題ないことを自己確認しておきたい。

経営方針とは、社員に浸透させるものではなく、ある意味、経営者の行動を縛るものであり、「そこに書いてあること以外はやらない」という錨になる。

経営者は、言語化することによって日々の経営に自ら制限を加える一方で、迷いをなくすことができる。言ってみれば、不自由さの中の自由を手に入れることができる。Mっぽい思考だけど。

2つめは、経営方針の言語化をすることによって、協力者を募りやすくなるという効果がある。

1人会社だったりすると、経営方針の言語化はほとんど必要ないと思うけど、法人として仲間を募って事業を展開する際に、こういった言語化は必要になる。

ユヴァル・ノア・ハラリのサピエンス全史によると、人間(ホモ・サピエンス)は「想像力」を持つことによって、集団で結束して獲物を取って、いろんな苦難にも乗り越えてきた歴史を持つ。

経営方針の言語化も、仲間を募る際に、同じ「想像力」を共有する手段として機能していく。

そもそも、会社(法人)自体、ホモ・サピエンスが発明した想像上の人格であり、その想像上の人格の身にまとわせるキャラ設定が、ミッション、ビジョン、バリュー、パーパスということになる。

そう考えると、そもそも、言葉ってのは、複数人で想像(概念)を共有するための機能であって、言葉自体に本質的な価値が備わっている訳ではないことに気づく。

あくまで主体は、その時代ごとのホモ・サピエンスによって新しく生み出されていく想像物(価値観や概念)のほうであって、その都度、それを言い表す代替物として、適切な言葉が作られているに過ぎない。ちょっと哲学的だけど。

ということで、これからも僕なりに、その時代ごとの空気をうまく嗅ぎ分けながら、そして、都度適切な言葉を使い分けながら、自分の居場所の確保と仲間探しにこれからもいそしみたいと思う。

それがホモ・サピエンスとして引き継いだクレバーさなんだろうな、と自分自身に言い聞かせながら。

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