ショートホープスーパーライト

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煙草をやめて15年以上たつ。20代の頃はかなりのヘビースモーカーだった。

当時(1990年代)は、煙草に対して今より社会はおおらかで、僕は会社に行っても自分の席で仕事をするより、社内の喫煙スペースで仕事をすることの方が多かった。
当時、吸っていた煙草はショートホープ。マイルドセブンやセブンスターといった当時のメジャーな国産煙草よりニコチンやタールが多く、ちょっときつめの煙草だった。そして何より他の煙草より太くて短い。僕の中では、ちょっとしたハードボイルドのアイコンとして、ショートホープを捉えていた。
で、その後僕は結婚して家庭を持ち、子供が生まれて、ザ・お父さんになった。
結婚して子供が生まれる前には、煙草もやめていた。あれだけヘビースモーカーだったのに、幸運なことに、ある日、スパッとやめられた。
今から思うと、その時が、ハードボイルドからザ・お父さんに僕が変身した瞬間だったのかもしれない。
そして先日、駅ナカのニューデイズで、買い物をしていると、隣のレジに立った僕より少し年上の50代の男性が、店員に向かってこう言った。
「ショートホープスーパーライトひとつ」
僕は耳を疑った。ショートホープに、スーパーライトがあるのか?意味がわからない。僕からすれば、しょっぱいあんみつくださいみたいなことを言っているのだ。
いつからショートホープは、ハードボイルドじゃなくなったのだろうか。いつから狼は、スーパーライトという首輪をつけられて、人々に媚びを売るようになったのだろうか?(←偏見)
僕は店員の背後にある商品棚の存在に気がついた。全面に煙草がぎっしり並んでいる。左上から順に番号が振られている。右下の最後の煙草をみると、252番と書いてあった。
いつから煙草ってこんなに種類が増えたのだろうか?明らかに喫煙者は減っているのに。
ある人から聞いた話を思い出した。
デスクトップパソコンを作っていたあるメーカーでは、昔、パーツごとに社内の商品開発部署が編成されていて、結局いい商品を生み出すことができなかった、という話である。
キーボードの企画をする部署は、キーボードばっかり何十種類も試作品を作るし、マウスやモニターの部署も同じようにそのパーツばっかり何十種類も試作品を作っている。どれも日の目を見なかった。
なぜかというと、当時、すでにデスクトップのパソコン市場はシュリンクしてて、ノートパソコンの時代に移ろうとしていたのだ。
市場が衰退する中でのマーケティングは、市場が拡大しないもんだから、やたらと既存の商品の細分化や差別化に挑んでしまう。内向きの努力である。逆に、市場が成長してたら、あんまり既存商品との差別化みたいなことは気にしないし、しょっぱいあんみつみたいな商品は考えないものだ。
話を元に戻そう。
要は、ショートホープスーパーライトという存在を知って驚いたという話である。
それは、例えば、ディズニーに買られたスターウォーズみたいなもんさ、もう、あの頃のものとは、別もんなんだよ、って、そんな解釈ってどうかな?と、自分に問いかけてみた。
うん、確かに君の言う通りかもしれないね、ちょっと残念だけど。
昔、ハードボイルドに憧れてた自分を思い出しながら、そんな風に、思考を収束させてみるのであった。

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