心理的安全性の作り方

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最近、心理的安全性という言葉を目にする機会が多い。

職場の組織などで、自分の考えや気持ちを安心して発言できる状態のことを指すらしく、Googleが「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」という研究結果を発表したことから注目されているキーワードのようである。

注目されている背景としては、リモートワーク化もあいまって、職場における人間関係が希薄になりつつある傾向があるのかもしれない。

そして、さらに本質的な問題として、年功序列、終身雇用のピラミット型の組織運営がなくなりつつある現在において、どのようなコンセプトでサスティナブルな組織運営をすべきか、悩んでいるマネジメントや経営者層が多いということなのかもしれない。

心理的安全性が高いチームを作るメリットとは一体何なのか?

心理的安全性が高い状態とは、具体的にはどんな状態を指すのか?

心理的安全性の高いチームはどうやったら作ることができるのか?

「心理的安全性の作り方」という本を読んで、僕なりに参考になったポイントを以下にまとめたいと思う。

心理的安全性の作り方

心理的安全性を確保するメリットと位置づけ

職場における「チーム」という概念の導入は、1980年以降最も広まったイノベーションのひとつ、と言われている。

その後、職場におけるマネジメントの関心は「いかに自分のチームの生産性(目標達成能力)を上げていくか?」という視点にフォーカスされることになった。

心理的安全性を確保するメリットは、一言でいうと、「チームの学習が促進される」点にある。

自由に意見を言い合い、失敗や学びを共有していける雰囲気を作っていくことによって、チームメンバー全員が相互に学習し、スキルアップしていく環境を作ることができる。

「チームの学習が促進される」ことによって、中長期的にチームの生産性があがっていく。

心理的安全性は、中長期的にチームの生産性を上げるための、チームパフォーマンスの先行指標(KPI)という位置づけになる。

日本版「チームの心理的安全性」の4つの因子

この本では、日本の組織における心理的安全性には、以下の4つの因子が存在している、と書かれている。

1.何を言って大丈夫という「話しやすさ」

2.困った時はお互い様という「助け合い」

3.とりあえずやってみようという「挑戦」

4.異能な人も受け入れる「新奇歓迎」

「きっかけ」→「行動」→「見返り」フレームワーク

チームの心理的安全性の4つの因子は、日々のチームメンバーの「行動」の集積によって作られる。

それがチーム内の人間関係やカルチャーとして形作られていく。

「行動」は、前後にある「きっかけ」「見返り」によって制御される。

いい「きっかけ」と「見返り」があれば、いい「行動」が生まれる。

逆に、悪い「きっかけ」と「見返り」があれば、いい「行動」は生まれない。

心理的安全性のフレームワーク

リーダーは、チーム内に存在する、それらの「きっかけ」「見返り」が、どちらにあたるのか見極め、必要に応じて改善し、チーム内でいい「行動」を生んでいく下地を作っていく必要がある。

心理的柔軟なリーダーシップが心理的安全性の高いチームをつくる

心理的安全性の高いチームをつくっていくためには、チームと状況に合わせて、いくつものリーダーシップのスタイルを使い分けていくことが必要。それを「心理的柔軟なリーダーシップ」と定義し、以下の3つの要素から構成されるものとしている。

1.変えられないものを受け入れる。

たとえ困難な思考や感情が現れたとしても、それらにオープンに向き合うこと。

ビジネスでは大変なことが起きるのがノーマル(当たり前)だという意識を持っておくこと。そんな心の受け入れ準備を「創造的絶望」というらしい。

2.大切なことに向き合い、変えられるものに取り組む

前進するための推進力を生む行動。チームとして向かいたい方向や大切にしていることを明確化、言語化することが重要。そして具体的な行動として取り組むことが必要。

3.変えられないものと、変えられるものをマインドフルに見分ける。

「今、この瞬間に注意を向け、この瞬間の体験に集中している」マインドフルな状態を作り、自分の過去の固定観念や主観に縛られない形で、その都度、やり方や行動を柔軟に変えていく判断をしていくこと。

おまけ:項羽と劉邦における「心理的安全性」

司馬遼太郎の「項羽と劉邦」という小説がある。

古代の中国を舞台にした歴史小説で、とにかく万能で強い項羽と、なんの取り柄もないのだけどみんなから助けられる劉邦という2人の男を対照的に描いた小説である。

2人は中国を統一するために競い合っていたライバルであり、当初は項羽の一方的な強さに負けっぱなしの劉邦だったが、最後は様々な有能な武将が味方について軍勢が逆転し、項羽に勝利する。結局、劉邦が中国を統一し、漢帝国の初代皇帝となる、という話である。

例えば、「組織の心理的安全性」を、項羽軍と劉邦軍に当てはめた場合、それぞれどうだったのだろうか、と妄想してみる。

項羽は自身が万能で最強の武将なので、部下には自分の指示に100%従えばいいというマネジメント。

一方で、劉邦はいつも絶体絶命なので、とにかくいい武将に協力してもらって、いい策略を常時募集しているマネジメント。

結果的には、項羽の軍からは有能な武将は離れ、劉邦の軍にいい人材が集まる結果となった。

これを「人徳」の差というのかもしれないが、僕はある意味「無知の知」の勝利だと考える。

心理的安全性の高いチームを作るためには、まず、リーダー自身が、ビジョンをしっかり示すことは大切だけど、未来に対する自分の無知を認め、メンバーの力を引き出していく行動を取り続け、メンバーからの信頼を獲得していくことが最終的な勝利につながる。

劉邦軍には、部下の力を引き出すための、4つの因子(「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」)の組織風土が、絶対絶命の状態であるがゆえに必然的に備わっていたのだろう。

最後に項羽は劉邦の大軍に囲まれ、自分の味方の多くが敵の劉邦軍に加わっていることを城壁の外から聞こえる故郷の歌から知ることになる。

これが有名な四面楚歌である。

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