新規事業に役立つフレームワークと実際の使い方

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新規事業の企画や実行に役立つと言われるフレームワークは世の中に数多くある。

でも、それらのフレームワークはどこか頭でっかちで、実際にどう使っていけばいいのか、ピンと来ていない新規事業企画の担当者も多いのではないだろうか?

かくいう僕も、その1人であった。

サラリーマン時代、なんだかんだ20年近く新規事業企画の部署にいた。

一応、新しい新規事業のフレームワークを知るたびに自分なりに一通り試してきたのだが、使いにくいものがあったり、使っていてもそのフレームワークの一部分の要素しか使っていないものなど様々あった。

今回、そんな経験を踏まえて、新規事業に役立つフレームワークを紹介させていただきながら、実際の使い方はこんな感じがいいんじゃないかなぁ、という僕なりのコメントを入れさせていただいた。

あくまで一例として、参考になれば幸いである。

新規事業に役立つフレームワークと実際の使い方

結論:どのフレームワークを使うと自分のモヤモヤを言語化しやすいか、まわりに説明しやすいか、という選択基準で使い分ければOK

新規事業に役立つフレームワークを使うメリットは大きく2つある。

1つは、自分の中でモヤモヤしているものを言語化し、具体的な活動計画に落とし込むため

2つは、主に社内のステークホルダーに説明する際に、合意形成を得やすくするため

なので、この基準に照らし合わせて、使いやすそうなフレームワークをつまみ食いしていけば個人的にはいいんじゃないかと思っている。

決して、採用したフレームワークで新規事業の成否は決まることはない。

フレームワークはただの空っぽの金型である。そこに誰が何を流し込むかが大切なのである。

では、新規事業に役立つフレームワークを以下、紹介しながら、僕なりの使い方のポイントを説明したいと思う。

分析、仮説フェーズで使う新規事業フレームワーク

SWOT分析・3C分析

SWOT分析とは、自社の内部環境を「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」、自社から見た競合や市場などの外部環境を「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」に分類し、自社の新規事業の成功要因の仮説を抽出するフレームワークだ。

一方、3C分析とは、上記の分析を「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の軸で要点整理したもので、SWOT分析と同様、自社の新規事業の成功要因の仮説を抽出するためによく使われるフレームワークである。

イメージとしては、SWOT分析で抽出した要素を3Cにおきかえて(単純化して)、説明資料上で表現するケースが多いかもしれない。

SWOT分析で、自社の新規事業の成功要因の仮説を抽出するプロセスは以下になる。

1.まずそれぞれ4つの項目で思いつくものをリストアップしてみる。

2.市場の「Threat(脅威)」でリストアップしたものの中から、自社の「Strength(強み)」で消し込める脅威はすべて消しこむ(→ 本当の脅威だけをあぶり出す)

3.市場の「Opportunity(機会)」でリストアップしたものの中から、自社の「Weakness(弱み)」で消し込める機会はすべて消しこむ(→本当の機会だけをあぶり出す)

4.残った「Opportunity(機会)」の要素と自社の「Strength(強み)」が結びつく線が、新規事業仮説となる。(反対に、残った「Threat(脅威)」と自社の「Weakness(弱み)」を結びつく線が、既存事業にとっての克服すべき課題となる)

とまぁ、このようにして書くと、すごくロジカルなフレームワークに見えるが、個人的にはこの分析手法は、分析する人の主観によって、どうとでもなるフレームワークだと思っている。

なぜならば、どのような事象も一面でできている訳ではないからだ。どんな事象にも、いい面があれば悪い面もある。一見脅威だと思うものも、見方を変えると機会に見える。それを判断する人の主観でどうとでもマッピングされてしまうからである。

なので、これらのフレームワークはどちらかというと、自分が組み立てた新規事業企画を社内のステークホルダーに説明する際に、合意形成を得やすくするためのレトリックとして利用したほうがいい、というのが僕の正直な見立てである。

過去にこんな記事を書いたこともあるので、よければ合わせてこちらもどうぞ。

STP、ポジショニングマップ

こちらはSWOT分析や3C分析で抽出した新規事業の成功要因を、新規事業の勝てる切り口や領域に展開していくフレームワークである。

STPは「Segmentation(市場細分化)」「Targeting(狙う市場の決定)」「Positioning(自社の立ち位置の明確化)」の3つの視点から、市場の定義をし、自社の新規事業の市場から見た立ち位置を明確にしていくフレームワークである。

ポジショニングマップというのは、STPで定義した市場を2軸のマップで競合との関係性を説明する時に使うフレームワークである。

僕が思うに、戦略の本質というのは、自社が勝てる新しい競争軸を生み出せるかどうかにあると考えている。

既存の市場というのは、誰かが作った競争ルールで戦いが行われている。それはかなりの確率で市場1位のプレイヤーが作った競争ルールになっている。

誰かが作った競争ルールで構成されている市場で戦っている限り、基本的には1位になる可能性は低い。

なので、新規事業では、既存の市場を違った切り口で切り直し、その中で、顧客にとっての新しい価値判断基準(競争ルール)を定義する作業が必要である。

それを行うのが、このSTPのフレームワークの本質だと思う。

そこには、技術革新や、次世代の新しい価値観など、今までの市場環境では存在しなかった要素と、自社の強みをうまく結びつけることによって、自社に有利なSTP仮説を引っぱっていく、というのが必勝パターンだと思う。

設計フェーズで使う新規事業フレームワーク

ビジネスモデルキャンパス

2012年に「ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書」という本によって日本でも広まった、ビジネスモデルを1枚でまとめるフレームワークが、この「ビジネスモデルキャンバス」である。

分析・仮説フェーズで立てた、市場と顧客と自社を中心とした「マーケティング仮説」に加えて、どうやってそれを具体化していくか、という「組織・マネジメント仮説」、そしてどうやって儲けていくか、という「収益・コスト仮説」を組み合わせたものである。

この1枚の図にすべて整理していくことによって、新規事業にとって必要な以下の3つの観点のバランスがとれているかを検証していく。

有用性:顧客にとって新規事業の提供価値が魅力的なものになっているか?(マーケティング仮説)

実現可能性:新規事業の提供価値を実現するための体制が作れるのか?(組織・マネジメント仮説)

持続可能性:顧客に価値提供を続けていける収益モデルの設計ができているのか?(収益・コスト仮説)

個人的には、新規事業の提供価値と、収益モデル、重要成功要因の辻褄があっているかを確認し、今後の事業化トライアルの際に、軸足がブレないようにチームメンバー内で合意形成するツールとして使うのがいいのではないかと思う。

ペルソナ分析

新規事業の立ち上げで製品やサービスを提供する顧客像を想定するフレームワーク。

顧客像を明確にした上で、顧客のもっている課題やニーズを定義し、そこに新規事業の提供価値の接着点を明確にすることを目的とする。

僕的には、新規事業の実行フェーズで、例えばWebマーケティングで顧客への認知や集客活動を行っていく時に、このペルソナ分析がとても大切だと考えている。ペルソナ分析ができていれば、どのようなWebメディアを使って、どのようなキャッチコピーで広告を出せばよいか、が明確になり、効果検証と改善のサイクルが回しやすくなる。

まずプレスリリースから作ってみる

Amazonの製品企画のフレームワークとして「まずプレスリリースを書いてみる」という手法がある、という記事を昔読んだことがある。

「Working Backward(逆さの取り組み)」と、その紹介記事には書いていた。世の中にデビューした時のイメージから考えて、それをどう実現させていくかという逆の順番で製品を考えていくらしい。顧客志向のAmazonらしい究極のマーケットイン型の新規事業フレームワークだと思う。

実行、検証フェーズで使う新規事業フレームワーク

PDCAモデル

「Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)」を繰り返すことによって、継続的に業務を改善していく有名なフレームワークである。

僕はこのフレームワークをそのままの形で社内の新規事業立ち上げに当てはめて運用すると、以下の2点で弊害が起こる確率が高いと考えている。

1.「Plan(計画)」に時間がかかりすぎて、なかなかトライアルが始まらない。

2.「Check(評価)」に時間がかかりすぎる。または評価をするための材料が集まらず、次のステップが描けないまま、プロジェクトが膠着する。

1.「Plan(計画)」に時間がかかりすぎて、なかなかトライアルが始まらない。

初めから大きな予算承認をもらってから新規事業プロジェクトを開始しようとすると、どうしてもPlanフェーズに大きな工数がかかってしまう。

それよりかは、現場判断でスモールスタートして、市場からのフィードバックをいち早くもらうプロジェクトマネジメントが理想である。

そのためには、PlanからPDCAをまわすのではなく、限りなくDoから始まるPDCAをまわすプロジェクトマネジメントをおすすめする。そのためには後述する、PoCやMVPといったミニマムスタートを可能にするアプローチ手法を取ることをおすすめする。

2.「Check(評価)」に時間がかかりすぎる。または評価をするための材料が集まらず、次のステップが描けないまま、プロジェクトが膠着する。

これはプロジェクト計画時の検証設計が甘いことに起因することが多い。

新規事業のトライアル時は、広さや量ではなく、深さとか質が大切である。

「スケールしないことをしよう。」

シリコンバレーのスタートアップアクセレアレーターであるY Combinatorのポール・グレアムもそう言っている。

新規事業の初期段階はユーザー獲得数ではなく、どこまで自分たちの手で熱心な1人のユーザーを発見できるかである。

このあたりの定性的な評価は、例えば、顧客になった人にインタビューをして、自分たちの事業の今後の方向性や可能性を見出すことに本質がある。

PDCAモデル自体は、既存事業に対してはとても有効に機能するが、新規事業に対しては若干カスタマイズが必要なんじゃないかと思う。

大きな組織で新規事業を立ち上げる場合、上記に挙げた「慎重な計画」と「時間のかかる検証」で、暗礁に乗り上げているプロジェクトをいくつも見てきた。

まじめにPDCAをまわそうとすればするほど、新規事業のブレーキをかけている、よくある例である。

過去にこんな記事を書いたことがあるので、よければこちらもどうぞ。

PoCモデル

PoCとは「Proof of Concept」の略語で、「概念実証」「コンセプト実証」と呼ばれる。

プロジェクトを本格的に開始して、サービス開発を開始する前に行う、テスト的な取り組みである。

これは前述のPDCAモデルでいう、小さくDoから始めるひとつのきっかけになるアプローチだと思う。

Webサービス事業でいうと、まずはランディングページ1枚作って広告で集客してみて、ターゲットユーザーが響くかどうかのテストをする、的なものである。

他に言うとクラウドファンディングのプロセスもそれに近いのかもしれない。

自分が考えている価値仮説がターゲットユーザーにそもそも響くのか、サービスや商品を作る前に試す、というのが、最近のインターネット的なDoから始まる新規事業フレームワークになりつつあるような気がする。

MVPモデル

MVPとは、「Minimum Viable Product」の略語で、「顧客から見て価値がある、実用最小限の製品、サービス」を意味する。

例えば、Webサービスの新規事業を新しく始める場合、いきなり自社でサービス開発するのではなく、既存のプラットフォーム上にコンテンツを載せて、最小限の工数でサービス提供を開始して、早期にユーザーニーズを検証し、次の成長にフィードバックさせていくようなイメージである。

Webサービスに関しては、最近ではローコードやノーコードなプラットフォームが数多く出現しており、会員制サイトもエンジニアに頼むことなく、ノーコードプラットフォームで構築することも可能になってきている。

またiPaaS(Integration Platform as a Service:複数のシステムを連携して業務自動化を実現するサービス)のラインナップも充実しているので、複数のプラットフォームを連携させた独自のWebサービス提供も可能になっている。

今後、新規事業立ち上げのシステム的なフレームワークとしても、これらの既存のWebサービスを活用して、MVPでのアプローチをしていくのがもっとも合理的だと思う。

まとめ

インターネットが普及する前は、新規事業の企画、立ち上げを行う際、「情報を集める」「仕組みを作る」といったプロセスには、多くのお金と労力がかかっていた。

それが今日、インターネットが普及し、Webサービスも進化してきた現在においては、誰でも簡単に情報を収集できるようになったし、仕組みもイチから作らなくても前述の既存のWebプラットフォームを活用すれば誰でもサービスを作れるようになった。

一方で、オープンな世界になった分、競合との技術的な差別化は作りづらい時代になってきたと言えると思う。

では、そんな時代で新規事業を成功させる競争優位性は何かというと、僕は、結局のところ、顧客との対話の密度じゃないかな、と思う。

今回ご紹介した新規事業のフレームワークの美味しいところをうまくつまみ食いして、自分の新規事業アイデアをうまく言語化し、社内のステークホルダーとうまく意識合わせができたら、いち早く、ターゲット顧客にアプローチして対話の密度をあげていくこと。

あとは、学びと反映の回転スピードをあげていくことである。

繰り返すが、フレームワークはただの空っぽの金型である。そこに誰が何を流し込むかが大切なのである。

そして、そこに流し込む大切な要素は、実はアイデアなんかではなく、主体者の意志なんじゃないかな、と、さらに思う今日このごろなのである。

ちなみに、社内で新規事業を立ち上げる際に、担当者としてどのようなポイントに注意しながらプロジェクトを進めていくべきか、5つのプロセスに分けて紹介した記事もあるので、よかったらどうぞ。

それと、ディレクターバンクでは、新規事業の立ち上げの外部人材として、Webの新規事業立ち上げ支援などもサポートしているので、興味のある人はお気軽にご相談ください。

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