「説得」をやめたら、営業が楽になった。

「ディレクターバンクさんって、どうやって営業しているんですか?アウトバウンドとか、がんがんやっているんですか?」

そんな質問をたまに受けることがある。

いや、そういうの苦手なんでやってないです、と答えると、結構意外そうな顔をされる。

自分は、営業畑の出身ではない。

僕はいわゆる営業畑の人間ではない。

なので、ディレクターバンクを立ち上げた時、正直なところ、営業のやり方がわからなかった。

前職はニフティで新規事業立ち上げとかやっていたけど、主にコンシューマー向けの新規事業が多く、法人営業の経験はそんなにある訳でもなかった。「電話をかけまくる」「飛び込みをする」という営業活動も正直やったことがない。

そして、サラリーマンをやめて、ディレクターバンクを始めることなった際、どういう営業をすべきか、いろいろ思案した。そして、自分なりの強みを整理してみた。

一つは、自分もかつて「会社組織側」にいたこと。現場担当者として、Webマーケティングをどう進めるか悩み、社内を動かすことに苦労した経験がある。顧客の課題感に、本当の意味で共感できる。これはWebマーケティング課題というよりか、どちらかというと、会社組織の課題の視点である。

もう一つは、自分たちも今まさに同じことに取り組んでいるということ。ディレクターバンク自体がコンテンツマーケティングでリードを獲得し、インバウンドで商談を開拓している。うまくいかない時の感覚も含めて、「同じ立場」として話せる。

この二つが、自分なりの営業の出発点になった。

BtoBの購買は、ファネルどおりには進まない。

BtoBの購買は複雑だ。複数の関係者が関与し、それぞれに異なる判断基準がある。担当者が「いい」と思っても、上長の承認、他部門の同意、稟議のプロセスが待っている。

さらに厄介なのが、タイミングの問題だ。「そろそろ検討しよう」というタイミングは、顧客側の都合で決まる。こちらが描いた検討ステージを、順序よく進んでくれることはほぼない。

それでも多くの営業は「もっとうまく説得しよう」という方向に進んでしまう。資料を磨き、トークを練り、もっと論理的に伝えようとする。でも、説得しようとすればするほど、場が重くなっていく。そういう経験を、自分も何度もした。

気づいたのは、「今すぐ決めさせること」より「いい感じで思い出してもらえる関係を作ること」の方がずっと大切だということだ。顧客のタイミングが来た時に、自然と連絡がくる関係をつくること。それが、説得より先に考えるべきことだった。

営業の仕事は、「社内を動かす設計」をすること。

では「説得しない営業」とは何か。

相談をもらって話を聞く場面でも、こちらから提案を押しつけるのではなく、顧客が組織内で検討しやすい道筋を一緒に考えることだ。BtoBの購買は、個人の納得ではなく組織の合意形成だからだ。

具体的に言うと、三つのことを意識するようになった。

・コンテンツを「説得の素材」ではなく「意思決定の素材」として設計すること。

・商談では「提案を通すこと」より「担当者が社内で説明しやすい言語を渡すこと」を優先すること。

・そして「買わせよう」とするのではなく「顧客が自分で決断できる情報」を揃えること。

要するに、営業やマーケの仕事は「顧客の代わりに社内を動かす設計をすること」なのだと、今は思っている。

説得の意識を外して顧客と話すと、会話の空気も変わる。相手が自分の言葉で話し始め、「実は社内でこんな課題があって」と打ち明けてくれる場面が増えた。提案する前に、まず聞く。そうすると、こちらがすべきことも自然と見えてくる。

自社の商品を見てもらう前に、まず自分たちのスタンスを見て、信用を獲得する。

最近、そんなスタンスで営業していくほうが、結局Win-Winの関係を作りやすいんじゃなかな、と思っている。