アドリブ力

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毎朝犬の散歩をしている。
すると、道すがらいろんな人に会って、たまに話しかけられる。

この間は、僕と同じくらいのおじさんが、僕に向かって「可愛いですね」と言ってきた。もちろん僕にではない。犬に対するコメントだ。
毎朝、ぼーっとしながら犬と散歩していることが多いので、このようにふいに話しかけられると、何も返す言葉が思い浮かばない。その時は、思わず「そうっすね」と言ってしまった。
そして後で「そうっすね、はないだろう」と自分に突っ込んでしまった。
最近、アドリブ力がある大人にすごく憧れる。
それは仕事の会議や商談でのコメントではない。オフの時間帯での(言っちゃ悪いが)どうでもいい話をしかけたり、リアクションしたりする力である。
僕はその能力が低い。なんとかしなければいけない。
昨年、会社勤めを辞め、犬を飼いはじめて散歩に行くことが増えた僕の喫緊の課題、それは近所で出会う人と適当な会話をする能力を上げることなのである。
散歩でよく会う、(向こうも犬を散歩している)おばあさんはいつも会話が豊富だ。会うと必ず(言っちゃ悪いが)どうでもいい話を仕掛けてくる。だいたい天気や気温の話が多い。
その話は「今日は寒いですね」レベルの浅さではない。
「今日は寒いから、自分は○○なことになってしまって、本当に大変なのよ」といった形にいつもブレークダウンされている。
僕はだいたい「そうっすか、大変ですね」レベルの返しをするのだけど、毎回、そのアドリブ力の低さにがっかりする。そんなんじゃ多分ダメなのである。
アメリカのテレビドラマや映画で、主人公が朝からいろんな人に挨拶するシーンとかを見ると、みんなハイテンションでおしゃべりだ。よくあんなに、とっさに相手を褒めたりからかったりできるものである。僕は朝からそんな気の利いたことは話せない。
僕もこれから年をとっておじいさんになっていく。おじいさんになると、口数が少なくなっていく人が多い。
僕はできるだけ、明るいおじいさんになりたいと思っている。そのためにも、アドリブ力を磨く必要があるのだ。
とまぁ、最近、そんなことをぼーっと考えながら、犬の散歩をしている。
そして、またいつものおばあさんに出会うのである。

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