小さいながらも自分で会社を経営してみて、最近大切だなぁと感じる技術のひとつに「見積もる技術」がある。
「見積り」とは「未来を定量化する作業」である。そして、「見積もる技術」は、さらにそれを一段高めて「自分にとって都合の良い未来を見つける技術」として、そんな技術があるんじゃないかと最近僕は考えている。
見積り、と言ってもいろんな見積りがある。
個々の商談の受注確度、会社の今後の損益やキャッシュフロー、事業のこれからのポテンシャルや方向性、新しいパートナーとの今後の協業のインパクト・・・これら、すべてが「見積もり対象」である。それぞれの行動や思考の裏側には、いつも個別の見積もり(定量的な仮説)があって、実際の答えが出てきて、見積もりとの乖離が見えてきたら、できるだけ早く軌道修正して、新しい次の手を打つ。そんな繰り返しである。
ビジネスをしていく上で、「見積もる技術」を高めていくメリットは大きく2つあると僕は思っている。
ひとつは、できるだけ早くリスクのインパクトを把握するため。
リスクに関しては、その数字ができるだけ早く見積もれてインパクトを予測しておいた方が、次のリカバリー策を打ちやすい。人間誰しもマズイなぁ、と感じていることには、蓋をして目を背けてしまう癖があるが、そこはやはり否が応でも直視してシビアな数字をできるだけ早く出してみる必要がある。すごく凹むけど。
もうひとつは、関係者のコミュニケーションのブレをなくして、次のアクションに物事を進めていくため。
関係者で見積もりをベースにコミュニケーションしていくことによって、それまでの曖昧で夢見がちな議論が一気にピリッと引き締まって、効率よく意思疎通することができる場合がある。ここでいう見積りとは、費用見積りやスケジュール見積り、新規事業企画の場合は収益見積りなどである。例えば商談などで、初めはいろんな希望が出てきて「あれもやりたい、これもやりたい」的な話でどんどん膨らんだりすることがあるが、そこから費用見積書をベースに金額を調整し始めると一気に曖昧な話が削り落とされ、現実的な計画に落とし込まれていくことがある。
ちなみに「見積もる技術を上げる」というのは、「見積り数字の精度を上げる」ことではない。「自分にとって都合の良い未来を見つける技術を上げる」ことである。
見積り数字の精度を上げることに主眼に置いてしまうと、見積もるスピードが落ちてしまう。今の時代、精度よりスピードである。精度が悪ければ、すぐに見積り直せばいいのだ。
未来は現実でない以上、未確定である。なので、未来というのはいつもその時点で無数の選択肢が存在する。見積りは数字を出す以上ロジックが存在するが、そもそもなぜそのロジックやシナリオを採用したのか、という点においては、自分の意志が存在する。どの未来が現実になって欲しいのか?それを見積りをしながら、自分で選択しているのである。
ビジネスだけに限らず、不確実で複雑な世界になればなるほど、自分の未来を自分でコントロールするために、まず自分で見積もりをしていく行動が、これからますます重要になってくるんじゃないかな、と最近僕は思っている。